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鉄の馬で日本を駆けろ!

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   八月二三日 ゴーイン ホーム


 朝の涼しさが僕の目を覚まさせた。これまで暑い熱い道を走り続け、野宿をするにも暑いといい続けていたのに、この日は使わなかった寝袋を使い、気温の低さに気づかされた。なんだかんだ言いながらも秋は案外近くまで来ているということか。

 宇和島市から和歌山までのフェリーにのる。本当なら淡路島を通って、甲子園に帰った方が速いのだが、今回の旅の目標である

   47都道府県上陸

を達成するためには唯一足を踏み入れていない県がある、それが和歌山県だ。どうでもいいと言えばどうでもいいけど、旅にはやっぱり目標があった方が面白いわけで、わざわざこの航路を選んで四国を離れることにした。兵庫県に住んでてこの航路を選択する人はあまりいないだろう。でも、これが 自分の選んだ道だし、たぶんもう一度この航路を選ぶことはないと思う、まあ、面白いからいいんじゃないかな?
 フェリーはゆっくりと淡路島の南を和歌山港に向けて進む。風も少ない、残暑は厳しい。家まではの距離は100キロもない。そういえばこの1ヶ月で走ってきた距離は8000キロを越えた。フェリーの航行距離を加算すればもっと長くなる。沖縄に行ってるから10000キロは越えているだろう。日本は小さな島国と言うけれど、じゅうぶん大きな国なんですね。

   * * *

 二時間足らずの船旅を終え、和歌山港に到着。あとは国道42号線(大阪で43号線にスイッチ)を残すのみ、ハンドルを切る回数はもう10回もない。
 ゴールに向けてゆっくりと、1ヶ月前の出発した日のことを思い出す。まさにこの道を逆に向けて僕は走っていた。希望と不安を抱き続けて走り去って行く自分の影が今僕の対向を通りすぎて行った。
 信号待ちをして周囲を見ると、ここは大阪市内。国道42号線と43号線との分岐点だ。確かに僕は一月前、この道を逆に走った。ここからは知ってる道だ。日常で来る範囲にあるエリアだ、とうとう戻ってきたのだ。 

 ゴールである自宅まであと20キロほど。バイクで言えば散歩の距離だ!
 
 日々をむさぼる怠惰な学生生活に満足しながらも物足りなさを感じて飛び出した僕は、一月の間日本の端から端までを走り回ってここへ帰ってきた。発つ前と今とで何が変わっただろう……。

 眼前に見える表示は兵庫県、もう少しまっすぐ走れば甲子園球場が見えてくる。そこを曲がれば自分の家だ。

 特に何が変わったわけではない。自分は自分だ。疲れているけど達成感は、ある。しかし、何が楽しかったのか、何がつらかったのか、そんなことはどうでも良かった。僕は甲子園球場横の交差点を曲がり、普段の生活で走り慣れた道を走る。気分的にはもう旅行という感じはしない。

 そして無事にゴール。誰もにも歓迎されるわけでも迎えられるわけでもなかったけど、それで構わない。その分日常生活に戻れるのが早くなる。僕は長い間付き合ってくれた相棒を労い、ゆっくりと荷物を下ろした。
「ありがとうな、相棒」
 軽くなったシートを叩く。また明日ちょい乗りで乗るかもしれないけど、今日はゆっくり休もうぜと言ってやった。

 荷物を家に入れて、久方ぶりの我が家に入る。家族は出掛けていて誰もいなかったけど、自分の机には今回の旅で出会った人たちからたくさんの便りが届いていた――。 


     おわり
 
   * * *

本日到達した都道府県。
   和歌山、(大阪)、(兵庫)  ( )付きは再上陸
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