鉄の馬で日本を駆けろ!
八月十五日 南の島へ!
台風一過、天気は夏に逆戻り。朝からセミは鳴き、気温もグングン上がるだろう。
今日は夕方にここへ戻ってくれば良い。沖縄行きのフェリーに乗るのだ。というわけで出航まで時間はだいぶある。天気も良いし、本土最南端である佐多岬まで行ってみよう。
不要な荷物をフェリー乗り場のコインロッカーに押し込んで、早速桜島行きのフェリーターミナルに向かう。今日は灰を噴いていない様子で、桜島の大パノラマを見ながらフェリーで渡る。鹿児島からすぐの距離なので渡し船感覚だ。
そして島の南側を海岸沿いに走り、垂水、鹿屋と国道沿いに大隅半島を下り時間はまだ午前八時前。南緯31度を越えて本土最南端、佐多岬に到着した。これで本土縦断の完成である。本州最北端(青森県大間)は通っていないが、それでも嬉しい。
この辺になると植物も南国テイストだ。さらには動物も。ヘルメットのシールドを開けて岬へ続く道を走っていると、ヘルメットの中に大きなトンボが入ってバサバサバサ……。視界を奪われ思わず停止。とにかく開放的だ。
旅行者と思われる中年夫妻に記念撮影をお願いすると朝食をごちそうになった。お二人は百名山巡りをしているそうで、あした屋久島にいくそうだ。それはすごいですねと言うと、
「日本一周よりは簡単ですよ」
と逆に激励された。そうか、僕も僕でそれなりに頑張ってきたんだなぁ――。
そして僕は北上、半島中腹の町、根占から薩摩半島に渡る船に乗って指宿へ向かった。薩摩の時代で言えばここが海の関所だ。
指宿の開聞岳を拝み、錦江湾(鹿児島湾)沿いにゆっくり北上、昼過ぎには鹿児島市内に戻ってきた。沖縄行きのフェリーターミナルは昨日の台風で乗れなかった人も重なり早くも賑やかだ。航行24時間、乗れば僕もそれだけゆっくりできる。思えば二週間前は北海道の最北端、稚内にいたのだ。そして毎日走り続けて今日、沖縄行きのフェリーに乗る!
僕はロッカーから荷物を出し、一日をゆっくりできるもののみを厳選し、足らずは買い込んでタンクバッグに詰め込み、バイクを船底の駐輪スペースにつなぎ止め、悠々と船室に上がった。
「とうとう沖縄に行けるぞ!」
僕は甲板に出て大きな銅鑼の音と錨が上がる音を聞きながら、港から船が離れて行くのを目に焼き付けた――。
作品名:鉄の馬で日本を駆けろ! 作家名:八馬八朔