鉄の馬で日本を駆けろ!
七月二九日 北の大地に
SAの野宿でも体力は十分回復するほど環境に体が適応を始めている。目覚めると周囲は同じようなバイク乗りだらけ、北へ行けば行くほどそんな人が増えているような感じだ。
今日の目的地は北海道上陸。昨日の内に青森発函館行のフェリーを確保した。この時期、同じようなバイク乗りが多いのでここだけは事前に確保するという作戦に出た。
となると青森までの予定が決定したので、高速道路を中心に北を目指す。秋田の八幡平を越え、本州最北の青森県に到達。今回の旅で初めて船に乗る。寄り道もいっぱいしたが、ここまで一週間を要した。
インターを下りると実に様々な単車が同じ方向へ進んでいる。どれも北海道を目指しているのだ。国内外の車種に老若男女のライダー、フェリーターミナルに着くとそこはまるでバイクの展覧会だ。
あまりゆっくりする暇もなく、さっさとフェリーに乗り込み僕たちは本州を離れた。
第一ステージ終了!って言いながらフェリーは北へ航路を取りゆっくりと進み始めた――。
* * *
午後4時ころ、最初の目的地北海道・函館に上陸。青森(本州)と違ってほんのり肌寒ささえ感じる。
函館から北にある大沼キャンプ場でテントを張って荷物を下ろした。ひとまず目的地に上陸した僕たちはどことなく解放感がある。
「よーし、函館まで繰り出そうか」
藤井さんはそういってゼファーの後部座席に乗るよう勧めた。
「大型の単車がどんだけ楽か教えてやる」
単車の調子を心配してくれる藤井さんは僕をゼファーの後ろに乗せて
函館に向かう事になった。荷物を下ろした単車は実に軽い。僕の250と違ってどっしりしていて安定感がまるで違う。大排気量の単車に僕も乗りたくなったのはこの時からだ。
着いたときはすでに陽が沈んでいた。それで構わない。というのも僕たちは日本三大夜景の一つ、函館山に登るつもりだったから。
残念ながら夏期は通行規制で単車は行けずロープウェイ乗り場へ、職員の人が
「残念ですけど、いいですか?」
と聞いてくる。この日は霧で夜景が見えないそうだ。せっかく来たのに引き下がらずにここは乗るべしで山上へ。
ところが、言うと通り山上は見事に濃霧の惨状。夜景どころか視界がたったの2メートル!(ちょっと大袈裟)、一寸先は闇とはまさにこのこと。
それでもなかなか見られない五里霧中を楽しんで下山する。夜景は見えなかったけどある意味面白かった。
それから僕たちは大沼に戻り、それぞれのテントで就寝した――。
* * *
本日到達した都道府県。
秋田、青森、北海道
(19/47)
第一章「北へ!」編 おわり。第二章に続く――。
作品名:鉄の馬で日本を駆けろ! 作家名:八馬八朔