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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章  10話   『ボーイミーツガール??』

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「ヒカリ、お前は俺をからかいに来たのか?それなら俺は帰らせてもらうぞ」

俺はくるりと回れ右をして、屋上の入り口まで歩き出そうとする。

「ん?帰るのか?それじゃこの話は貴様の家でじっくりゆっくりと話すとするか。…フフフ」

俺はピタっと足を止める。…ちょっと待て。

「俺が悪かった。ここで話を聞かせてもらう」

俺はすぐさまヒカリに謝り、ここで話してもらえるように頼んだ。…情けないって思うかもしれんが、仕方がない。俺の家に来てもらってはいらん誤解を生んでしまうからな。特にあの3人に。

「そうか?私としてはさっきの方が都合がいいのだけどな…実に残念だ。…フフフ」

ヒカリは不敵に笑みを浮かべていた。…冗談じゃない。そんなの絶対にごめんだ。
俺は、大きなため息をつき、肩をすくませる。

「…フフフ。まぁいいさ。それじゃ、話すとするか」

「…あぁ。頼む」

すると、ヒカリは、手すりのところまで歩いていく。

「さっき貴様が言っていたバケモノ…つまり、魔獣者のことだが、これは、私たちシェルリア、そして、アミーナのようなフォーリアの魔法使いとは異なる存在…どちらにも属さない存在なのだ」

「異なる存在…お前たち魔法使いとはどちらにも属さない存在…」

まぁ、何となくわかる気がする。外見からして違うし…あれは言うなれば『バケモノ』としか例えようがないからな。

「そうだ。そして、その魔獣者たちは『鍵』である貴様を消し去ろうと目論んでいるのだ」

「話の腰を折って悪いが聞いていいか?」

「何だ?」

「何で俺を狙うんだ?俺が『鍵』だからって理由だけなのか?」

それが本当ならふざけた話だ。

「まぁそれもある。だが、ヤツらの本当の目的は他にある」

俺を消すことはついでかよッ!!俺はそれだけであの時狙われたっていうのか。
激しく納得いかん。

「…で、その本当の目的とやらってのは一体何だ?」

「簡単なことだ。新しい世界の創造だ」

「あ、新しい世界の…創造…だぁ?!」

またワケワカランことを言い出しやがって…。
今にも新世界の神になるとか言い出しそうだな。ダメだ、早くなんとかしないと。

「そうだ。まぁ貴様の顔を見る限りよく理解出来てないようだからわかりやすく言おう。…フフフ」

ヒカリはニヤリと不敵な笑みを浮かべていた。

「その意味深な笑みは実に腹立たしいが…まぁいい。んで、それはどういうことだ?」

「フ…つまらん。私の言葉を軽く受け流しおって貴様らしくない」

まぁ、俺はお前と違って『大人』なんでな。いつまでもそんな手で腹を立てないのさ。
俺は軽く『フ…』と笑ってみせる。

「その含みのある笑いが気に入らんが…まぁそれは後にするか」

おいおい、後ってどういうことだよ。

「新しい世界…即ち、魔獣者を主とする世界…そして、魔獣者が支配する世界ということだ。しかし、そのためには私たち魔法使い、そして、『鍵』である貴様の存在が当然邪魔になるなるわけだな。それはわかるな?」

「あぁ。確かに、俺はどうか知らんがお前ら魔法使いは脅威になるだろうな」

「そうなると、魔獣者は私たちを排除しなければならない。邪魔者はどこに行っても邪魔な存在…。ヤツらが支配する世界の創造を果たすには脅威の排除、そして、どんな小さな反抗勢力も消えてもうらう必要があるのだ」

「そうだな。あのバケモノが世界を支配するには脅威である魔法使いを排除しなければいけないな」

「その通りだ。しかし、今、ヤツらには一つだけ好都合なことがあるのだ」

「何だそれは?」

「貴様にも前に話しただろう?私たちシェルリア、そして、フォーリアが今、再び敵対していることを」

「そういえば、そんなこと言っていたな。…そうか、脅威であるお前ら魔法使いが今、敵対しているということは…」

「…はい、そうです。私たちが今、敵対しているということは魔獣者にとって好都合なんです。自ら手を下さなくても勝手に互いが争ってくれるからです」

「ミナ?」

ミナの声が聞こえて俺が振り向くと、いつの間にかミナが屋上にやってきていて、そして、俺たちの背後に立っていた。

「フ…アミーナか。まぁいい。…そう、そして、争い続ければいつか滅びる。ヤツらにとってこれほどおいしいことはない」

「…そうだな」

勝手に争って、勝手に滅びてくれるんだ…ヤツらは万々歳ってワケだな。

「だから、ヤツらの問題事は減り、もう一つの重要な問題にだけ目を向けられるようになるってことだ」

「もう一つの重要な問題………それが、俺か?」

「…はい、その通りです」

ミナは悲しそうな表情でそう答える。

「貴様が私たちの争いを鎮めることの出来る重要な『鍵』という存在であるという話は前にしたな。そう、争いを鎮めることの出来る貴様さえ消してしまえばもう争いを止める者がいなくなる」

「………」

確かにそうだ。鍵である俺が消えてしまえば誰も争いを止めることも出来ない。

「そして、争いを止める者もいなくなってしまったらフォーリアとシェルリアはこのまま争い続けて、その先には…滅ぶしかないのです」

「そういうことだ。そして、ヤツらは晴れて目的が達成でき、ヤツらが支配する新たな世界が構築できるということだ」

「………」

俺は二の句が告げなかった。
それは、あのバケモノたちにそんな野望があったということじゃない。
それは、全てのことの中に俺が関わってくること、俺は、重要な存在であると同時に危険な立場にいることがこの話を聞いて改めて気づいたからだ。

俺が消えてしまうと、フォーリアとシェルリアの争いは止められない、そして、滅びる。
俺が消えてしまうと、世界があのバケモノが支配する最悪な結果が待っている。
…何なんだ一体。こう次から次へとまぁ俺をこの問題に関わらせるように…例えるならそう、まるで、俺が無関係だと言って逃げられないように縛り付けるかのようだ。

俺って一体何者なんだ?って自分に問いたくなってくる。…まぁ、答えは魔法使い、そして、重要な鍵…だろうがな。

でも、そんなことはよく考えてみればどうでもいいのかもしれんな。だって…。

「なら、簡単だな。俺がやられなければいい話だ」

俺は決意の色を瞳に灯して、軽く微笑んでそう言った。
きっと頭のどっかで解っていたんだろうな。これから俺がどうしたらいいかがさ。

「ほぉー?貴様にしてはよくわかっているじゃないか。その通りだ」

そう、いろんなことをぐだぐだ考える前に、例えどんなことが待ち受けていたとしても俺がやられなければいい。結局はそういうことなんだ。

「まぁな。あれだけのことを見て、聞いて、そして体験したんだ。もう、俺は無関係ではなくなってきてる自分に気がついたんでな。だから、俺はこう思うようにした…それだけだ」

「ヒナちゃんいろいろと考えていたんですね。…そうですね。私もヒナちゃんに危険が及ばないように全力でサポートします」

ミナは真剣な眼差しで俺を見つめる。

「ありがとうな、ミナ」

俺はミナの頭を撫でてやる。

「フ…。まぁ、精々ヤツらに消されないよう頑張るんだな。…じゃあな」