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秋月かのん
秋月かのん
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第1章  10話   『ボーイミーツガール??』

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…って意外と和だな。魔法使いだから杖かステッキかと思っていたのだが…。
その扇子で暁の頭をバシバシ容赦なく滅多打ちにしていた。

「いて、痛いって。わ、悪かった。俺が何かお嬢ちゃんの気に障ることを言っちまったなら謝るから、ごめん、悪かった」

「このッ!このッ!ってまだ言うかぁッ!!貴様わざとだな、そうだな!?もう許さんぞッ!!二度とその愚言を吐けないようにその憎たらしい口ごと消し去ってくれるわぁッ!!覚悟せよッ!!」

ヒカリは、暁に向かって手をかざす。…ってまさか、こんなところで魔法を使う気か?マズイ!!何とかしないとッ!!…しょうがねぇ、こうなったら…やるしかない。

俺は、ヒカリの側まで急いで駆け寄ると、ヒカリを持ち上げ、片手で抱える。

「お、おい!何をする!こら、放せッ!」

ヒカリがじたばた暴れるのを何とか押さえると、俺はヒカリを抱えてダッシュで教室から出るのだった。

「おい、貴様何をする!!放せ!早く降ろせ馬鹿者」

ヒカリが俺の頭を扇子でバシバシ叩き、さらに、じたばた暴れる。…そろそろいいだろう。
教室から大分離れ、人気が少ないことを確認すると、ヒカリを解放してやる。
すると、ヒカリは、むすっとした顔で俺にやり場のない怒りを向けてきた。

「貴様、何のつもりだッ!私がせっかくあの愚か者に恐怖と絶望を味あわせてやろうと思っていたのに邪魔しおって」

「何言ってやがる。あのまま放っておいたらお前、魔法使う気だっただろうが」

後もう少し遅かったらとんでもないことになっていただろう。
…まったく面倒なことをしてくれるぜ。

「それがどうした?別に困ることでもなかろう」

「いや、もの凄く困ったことになると思うぞ。お前らの方では魔法は普通のことかも知れんが、こっちでは普通じゃねぇんだよ。そんなもん使ってみろ、大騒ぎどころの騒ぎじゃ済まないぞ」

「ん?それがどうしたんだ?そんなことは私は知らん。その後のことは勝手に騒ぐなり喚くなり好きにすればいいさ」

ヒカリは、ふんっと鼻を鳴らしてそっぽを向いてしまった。
何て身勝手な…。お前、ホントはただのわがままなガキだろ。

「…まぁ取り敢えずそれはいい。んで、俺に何か用か?あんな猿芝居までしやがってよ」

「ふむ、そうであった。それでは、ハルト、取り敢えず私について来い。話はそれからだ」

そう言うとヒカリは、スタスタと先陣を切ってどんどん歩いていってしまう。

「…やれやれ。まぁいいけどさ」

俺は、何だかどっと疲労がきているのを感じつつも、仕方がなくヒカリの後についていくのだった。



<1章=戦う意味>



「やはりここはいいな。煩いハエ共もいなくて実に清々しい」

「やっぱここか…まぁ、予想はついていたが」

…って煩いハエ共はないだろう。
ヒカリの後をついて行った俺は、今、屋上にやってきていた。

「んで、俺に何の用なんだ?」

こんなところに俺を連れてきて何をしようってんだ。まさか、また俺に協力しろって言うんじゃないだろうな。

そんなことを考えると、ヒカリはくるっとこっちに向き直る。

「貴様、昨日、魔獣者と接触したようだな」

「魔獣者…あぁ、あのバケモノのことか。確かに、接触したな。でも、何でそんなことをお前が知ってるんだ?」

「私でなくても既にこっちの人間は皆知っておるぞ。おそらくフォーリアにもそれは伝わってるだろう」

俺が知らない間にもうそんなに知れ渡っていたのか…。待てよ、っていうことはだ。

「まさか、俺がすることなすこと向こうには筒抜けってことか?」

これが本当だとしたら……。考えるだけでも恐ろしい。

「いや、そういうことじゃない。私たちは、魔力と魔力の引き合いやその接触で誰が誰とが特定出来るんだよ。だから、直接現地に赴かなくとも魔力を感知することでその場で状況を把握することが出来るんだよ」

「ん?何だかまた混乱してきたが、つまりこういうことか?ヒカリたち魔法使いは、魔力を感知する能力により誰と誰が接触したり、突然何者かがこっちに…っていうかどこかに現れたとしても感知することで知ることができる」

「そうだ」

「それじゃ、それ以外のことは別に観賞されてるわけでも、偵察されてるわけじゃないんだな?」

「よく意味がわからないが、取り敢えず、私が言ったこと以外は別に貴様を偵察させるために影で何かが動いてるとか故意に誰かが貴様の情報を入手しようとすることはしていないぞ」

「そうか」

俺は、ヒカリが言ったことに胸に手を当て安堵する。…はぁ~、安心したぜ。
しかし、ヒカリは俺が安堵をしているのを尻目に、不敵ににやりを微笑んだ。
そして、ヒカリは高笑いをしながらこう言った。

「他の者を偵察にこっちに呼ばずとも、この私がお前と共同生活することになっているのだから偵察など不要。私が貴様と共に生活するのだから情報など私がいれば十分なんだよ♪アーッハハハ」

俺の安堵は一瞬で脆くも消し去って、再び絶望の淵に引き戻されてしまうのだった。
そうだった…すっかり忘れてたぜ。…俺の平穏が…どんどん…消え去っていってしまう。

「まぁそんなことは今はどうでもいい」

高笑いしていたヒカリは、突然、真剣な表情になり、俺をじっと見据える。
…お前にとってどうでもいいことかもしれんが、俺にとっては大問題なんだよ…。
俺ががくっと肩を落としているのにもお構いなしにヒカリは話し出す。

「貴様に話しておくことがある」

「一応聞いておこう。何の話だ?」

「昨日、貴様が接触した魔獣者についてのことだ。貴様もよくは知らんだろから知っておいた方がいいと思ってな」

「…まぁそうだな。俺も何が何だかあのバケモノについてはわからんからな」

俺を狙っているようだったしな…。まったく迷惑な話だ。

「それと追加で、この前、貴様と会ってから新たに情報を入手し、わかったことがあってな。それも貴様にとって知っておいた方がいいからな」

「それはそうだが。何だかサービスがいいな。どういう風の吹き回しだよ?」

…何か変なモンでも食ったのか。

「フフフ…。しかし、これを聞くには私たちに協力することが条件なのさ」

「………」

…激しく俺の思い過ごしだったようだ。やっぱりいつもヒカリだった。
その言葉で俺が唖然としてしまい、そして、肩をすくめると同時にヒカリはにやりと悪戯が成功した子供のように微笑んで、

「フフフ…。それは冗談だ。すっかり本気にしおって、面白いヤツだ。フフフ♪」

このガキ、マジむかつく。
まぁ、こんなことでいちいち怒っても仕方ないな。そうすればこいつの思うツボ、俺はいい玩具にされちまうからな。

「…まぁそれで、取り敢えずその話とやらを聞かせてもらおうか」

俺は、込み上げる怒りを押さえつけて、極力冷静を意識しながらヒカリに訊ねる。

「いいだろう。では、極力解りやすく貴様に理解しやすいようにこの私が誰でもわかるように簡単に話すとしよう。…フフフ」

ヒカリは、にやりと微笑みながらわざと『理解』という単語を強調して、そして、俺を小馬鹿にするようなニタニタした目で俺を見つめてくる。…このガキ。