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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章  10話   『ボーイミーツガール??』

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ヒカリは、俺たちに背を向けると屋上を後にしようと歩き出す。

「ヒカリ」

俺は、帰ろうとするヒカリを呼び止めた。

「ん?何だ?」

「ありがとうな。いろいろと」

「フ…。別に礼などいらん。まぁ、私としても貴様が消えてしまっては困るからな。貴様が消えてしまったら協力もなにもないからな」

「ヒーちゃん…」

「まぁ、もっとも一番の理由はフォーリアの連中を思い知らせ、屈服させ、泣き喚く姿をこの目で見ることだけどな。それには貴様が絶対必要だからな。アーッハハハ」

ヒカリは、いつものように大きく高笑いする。

「ヒーちゃん!!」

「あぁ、それとアミーナよ、覚えておけ。私は、もう貴様の仲間でも友達でもない。だから、今日はこれで帰るが、次からは容赦はしないぞ。それを忘れるな」

ヒカリは、高笑いを止め、さっきとは違い冷徹な目でミナを見つめ、そう言った。

「うぅ……」

ミナは、途端に何も言えず押し黙ってしまい、表情も暗くなってしまう。

「じゃあな」

そう言うとヒカリは、屋上を後にするのだった。

「…ヒナちゃん」

ミナは、悲しげな顔で俺を見つめていた。…まぁ、無理もないな。ヒカリは、シェルリアの魔法使い。ミナはフォーリアの魔法使い。互いは敵対関係にあるわけだからな。
でも、俺は、そんなミナに今はこう言ってやるしかできなかった。

「まぁ、いろいろと難しいとこはあるが、でも、きっと、あいつと分かり合える時が来るさ」

「…本当?」

ミナは、その言葉に縋るような目で俺を見つめてくる。

「あぁ。だから、それまで、俺たちは出来ることをするしかないんだ。いや、出来ることをやるしかないんだ」

俺は、ミナに力強くそう言ってやる。
そう、今、俺たちが出来ることは自分に出来ることを精一杯やる…これしかないんだ。
俺に出来ること、それは、フォーリアとシェルリアの争いを鎮めることのできる『鍵』、それに、魔法使いであるということを自覚すること。

そして、最も重要なこと…そう、魔獣者とかいうバケモノに俺が消されないようにすることだ。これが最も今、俺がやるべきことなんだ。

俺がやられちまったら元も子もないからな。だから、俺はやられないように出来る限り努力する。今は、それしかない。

俺がそう考えに耽っていると、ミナが口を開いた。

「そうですね。ヒナちゃんの言う通りです。私は、ヒナちゃんにそう言われるまで気づけませんでした」

ミナは、苦笑いをすると、途端には真剣な表情になるのだった。

「わかりました。ヒナちゃんがそう決心されたなら私も出来ることを精一杯頑張ってやります」

さっきまでの暗く悲しげな表情とは比べ物にならないくらいの真剣な表情だ。
何かを決心したかのようなそんな表情だった。

「あぁ、そうだな」

俺はそんなミナの頭を優しく撫でてやった。

「あわぅ……えへへ」

ミナは、笑顔になって気持ちよさそうに頭を撫でられていた。

「んじゃ、そろそろ帰るか。いつもより大分遅くなっちまったみたいだしな」

空を見上げると、綺麗な茜色に染まっていた。

「はい、そうですね」

ミナも俺につられて空を見上げる。

「綺麗ですね」

「あぁ、そうだな」

俺たちは、揃ってしばらくこの茜色の空を見上げていたのだった。



といい雰囲気で終わればよかったのだが…。

「ハ~ル~く~ん~!!」

「あれ?今、何か声しなかったか?」

「…え?あ、いえ、私は聞こえませんでしたよ」

「おかしいな。何か姉さんに似たような声がしたのだが…」

「お兄ちゃん~!!」

「ほら、今も。今のは明日香に似たような声だったが、これも俺の気のせいか」

「いえ、今のは私にも聞こえましたよ。そうですね、言われてみれば明日香ちゃんの声に似ていました」

「…ということは」

俺がそう思った、まさにその瞬間だった。

「ハルくん!!」
「お兄ちゃん!!」

勢いよく開け放たれたドアからは、何やら怒りに満ちた表情で姉さんと明日香がやってきた。

「何だよ、二人ともそんな怖い顔してよ。しかも、息を切らせて…」

「何だよじゃないよ!さっき生徒会室に初等部の娘が来て、屋上でハルくんとアミーナちゃんが…ごにょごにょ…してるっていう報告を受けたんだよ」

どんな報告だよッ!!
生徒会はプライベートも報告されるのか??って待てよ、初等部の子??

「へ?あ、あの姉さん今、何て言いました?よく聞こえませんでしたが…」

「え、それは~…って今はそんなことは別にいいじゃない」

「よくないですって!ワケがわかりませんよ」

俺は唖然とし肩をすくめていると、次いで明日香が姉さんを押し退け、口を開く。

「お兄ちゃん!さっき初等部の女の子が私の教室に来て、『春斗お兄ちゃんと将来を誓ったの。だから、わたしは春斗お兄ちゃんのお嫁さんなの♪よろしくね♪お姉ちゃん』って言われたんだよ!!本当なのッ??」

「はぁッ?!何だよそれは!俺は知らん、全くといって知らん。全然見に覚えない」

「怪しい…」

明日香はじとーっとした目で俺を見つめている。…って何でだよ!

「怪しいも何もない!俺にそんな初等部の知り合いなんているわけがないだろ!そうだよ、俺に初等部の知り合いなんて…」

待てよ…。…いるじゃないか一人だけ。しかも、そいつはさっきまで俺たちと一緒にここにいたじゃないか。

でもだ、何でそいつが姉さんと明日香にそんなデマを流して回ったんだ?その意図がわからん。っていうか、そんなことされる理由もない。別に、あいつに何かしたわけでも悪口言ったわけでも………あ。

「その含みのある笑いが気に入らんが…まぁそれは後にするか」

(………)

「あれは、そういうことだったのかぁぁぁああッ!!」

あのお子様魔法使いめ、何てことをしてくれるんだ。

「ハルくん!」
「お兄ちゃん!」

姉さんと明日香がジリジリとにじり寄ってくる。…って二人とも怖すぎるって!

「二人とも落ち着け!俺の話を聞いてくれ!!」

「「問答無用ッ!!」」

「ま、待て!二人とも…って、うわぁぁぁあああ!!」

茜色の空の下の屋上で俺の断末魔がこだまするのだった。
…何か理不尽だぁぁああッ!

<次回へ続く>