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秋月かのん
秋月かのん
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第1章  10話   『ボーイミーツガール??』

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まぁ、こんな悪どい考えが思いつくのはヒカリしかいないだろう。…さすが、悪の魔法使い。でも、そんな手に乗るものか。

「こら、離せって!演技も大概にしろッ!!本性を現しやがれッ!!」

俺は、ヒカリを俺から引き離そうと引き剥がし作戦を決行する。

「やだやだ~!春斗お兄ちゃんと一緒にいたいんだもん~!いるんだもん!」

ヒカリはこの期に及んでまだ演技を継続させていた。…この、離しやがれって!

「お~☆ミナたんに続いて、新たなライバルヒロインの登場かぁ~☆?これはまた面白くなってきたネ~☆これはまさに、ギャルゲー・ザ・主人公のシチュだネ☆リアルギャルゲーのスタートだぁ☆」

かえでは、またかえでワールドのフィールドを展開させ、目をキラキラと輝かせていた。
…この馬鹿が、いいかげん、その思考はやめろ。

すると、もの凄い音がしたので思わず視線をそっちに向けてしまった。
…音の犯人は暁だった。

「もう我慢ならんわぁッ!!春斗ぉぉぉぉおッ!!貴様ってヤツはぁぁあッ!!」

暁はメラメラと炎のようなオーラを身に纏って、何やら怒りに満ちた瞳で俺を睨みつけてくる。…おいおい、この展開…まさか…!ヤヴァイッ!!

「待て待て!だから誤解だって言ってるだろ!俺はホントこいつとは何の関係もないんだってッ!」

「何の…関係も…ない…だと…?」

暁は声を暁のこめかみがピクピクと振動していた。

「そんなもんに騙されるかぁーッ!!何の関係もないだと?ふざけんじゃねぇーッ!!この鬼畜ペテンがぁッ!!じゃそれはどう説明するんだよッ!?」

暁は俺の後ろでじゃれているヒカリをビシッと指差した。

「だから、これはこいつが勝手にやってることだ。俺には関係ない、あぁ関係ないね。一切、断じて、本当に関係ない」

俺は言ってやった、あぁ言ってやったさ。このままじゃ俺への疑惑が俺の意志とは無関係に確証に変わってしまうからな。

それだけは何としてでも避けなければならん。もし、そうなってしまったら俺の明日からの生活が…いや、俺の人生が…。…あぁ、それだけは避けねばならんな。

しかし、俺の不安と心配を尻目に、ヒカリは涙目で俺の腰に纏わり付いてきた。

「きゅ~ぅ。春斗お兄ちゃん、あのおじさん怖いよ~。ひーん」

更に何を思ったかヒカリは、きゅっと力を入れ俺にしがみ付いてきた。…っておい。

「おんのれぇぇ~春斗ッ!こんな純粋で無垢な小さい子をたぶらかしおって…この俺が貴様を修正してやるッ!!死して自分の愚かさに気づきやがれぇッ!!」

暁は怒りでパワーUPし、そして、オーラを纏った拳が俺に向かって何度も繰り出される。

「ちょ…待て…おわぁっと…落ち着け…この馬鹿」

俺は何とか間一髪のところで暁の怒りで数倍も強化された拳を避けていた。…おわぁッ!
危ねぇ~!こんなの当たったらただじゃ済まないぞこれは…。

「黙れぇッ!!このペドモンキーがぁッ!!貴様の数々の悪行…俺は許すわけにはいかないッ!!見逃せるものかぁッ!!」

「だから、違うって!俺の話をちゃんと聞けって」

「これは許し難き事態発生だッ!!さて、この鬼畜モンキーをどう料理してやろうか。…ぶつぶつ」

って聞いてねぇし。…こうなっちまった今のこいつに何を言っても無駄のようだな。
完全に怒りで頭がオーバーヒートしてやがるからな、この妄想馬鹿野郎は。
俺が何を言っても、どう弁解してもこの馬鹿にはてんで聞く耳を持ちやしねぇ。
さぁて、どうしたものか…。

俺は、うーんと唸りながらその場で腕組みをしながら考え込んでいた。

「あ…あ…あぁ…あの…あの…あのあの…」

すると、ミナが人見知りでありながらも声を震わせて、ビクビクしながら話し出す。
…どうしたんだ、ミナ?

「え…えと…えと…あの…あのあの…そ、その子は…わ…わわ…私の…し…しし…知り合いの子…なんです…」

「…へ?」

「だ…だだ…だから…それで…ヒナちゃんとも…な…なな…仲良く…なって…し…しまって…あの…その…あうぅ」

ミナは、おどおどしながらも何とか言いたいこと言い切ったような感じで、顔をうつむかせて顔を真っ赤にしながらも達成感のある表情をしていた。

まさかミナ、俺をフォローしてくれたのか??
人見知りの激しいミナが震えながらも俺のために。
でもな、ミナ、今更そんなこと言ってもな、こいつらが信じるはずが…。

「何だ、ミナちゃんの知り合いの子だったのか~納得」

っておい。何でそこで納得するんだよ。っていうか茜、何で納得してるんだよ。

「ん~確かにこの萌え萌えな感じはミナタンの知り合いで間違いないよネ~☆グッジョブ☆!!」

ってお前もかぁッ!!

「何だ~ミナちゃんのお知り合いさんだったんだね~。てっきりハルちゃんがまたグレちゃったのかと思ったよ~。本当によかった~安心したよ~」

冬姫までも…。っていうかだから何で俺がグレると『そっち』に走るんだよ。しかも『また』って何だよ!またって!前科があるのかよ!?

どんなグレ方したらそんな発想になるんだよ??

頭を抱えて落ち込む俺を尻目に、クラスの皆もミナの言葉にうんうんと納得していた。
…俺って一体。

「そうなのか~!ミナちゃんのお知り合いの子だったのか~!そうかそうか♪」

暁は、大きく3回頷くと、いつものようにだらしない顔でにやにやと微笑みだした。
…この野郎、俺の言葉は信じられなくてもそっちの言うことは信じるんだな。まったくホントしょうがねぇヤツだな。

「でさでさ、せっかくお知り合いになったんだからお近づきにあやかりたいぜ!なぁ、ミナちゃん紹介してくれよ」

いや~止めておいた方が身のためだぞ。まぁお前はヒカリの本性は知らないだろうから無理ないけどな。…こいつの本性は極悪非道なんだぜ。

「それで、『お嬢ちゃん』のお名前は何ていうのかな?」

ば、馬鹿暁ッ!それはヒカリのブロックワードだから…ってもう遅いか。

「………」

ヒカリは顔を真っ赤にしながらこめかみをピクピクとさせ、眉毛がつり上がって逆ハの字になりながらも怒りを抑えているようであった。

…おいおい、これはヤヴァそうな感じが…。

「フフフ…。貴様、この私にそのふざけた呼び名で呼ぶとは…。よほど死にたいようだな」

「え、あれ?お、お嬢ちゃん…さっきと何か雰囲気が違うような…」

あぁ…。暁よ、長いようで短い付き合いだったな。こうなったら俺にも、もうどうすることもできん。…さらば、暁。俺は心の中で暁に別れを告げると、ヒカリの側からゆっくりと気づかれないように離れる。-そして

「この愚か者めがぁぁあッ!!貧民風情の分際でこの私に無礼な愚言を吐きおってッ!!もう許さん、絶対許さんッ!!この私がそのなめ腐った軟弱な脳を矯正してやるわぁッ!!」

ヒカリは顔を真っ赤にし、まるで般若のような形相で暁に激昂した。…うわぁ怖ぇ~俺の時も怖かったが、また、一段とこれは恐ろしい。とても、さっきまでの猫かぶりのヒカリとは大違いの豹変だぜ。…女って恐ろしいって改めて身にしみて実感したぜ。

しかも、どっから取り出したのか、いつの間にヒカリの手には扇子が握られていた。