第1章 10話 『ボーイミーツガール??』
「気が向いたらな~。じゃまたあとで」
茜は、かえでと同様、教室の外の水道まで歩いていった。
「さて、そんじゃまぁ茜たちが戻ってくるまで惰眠に励もうとしますかね」
といってもHRまで後10分くらいしかないけどな。まぁ、寝るのと寝ないのじゃ全然違うからな。そうだな、ちょっとは身体を休めておこう。そう思うと俺は、机に突っ伏し、寝ることにした。
寝るのにはそんなにかからなかった。突っ伏すと同時に意識が朦朧とし、眠りに落ちていった。
「……な…づ……ひ…づき……」
何だ…?何か聞こえたような…。まぁ…気のせいだな。俺は眠いんだ。
「おい……ひな…き……おきろ」
何だ…まだ聞こえるような…。ちょっと今は静かにしてくれ…まだ起動するには早い。
「起きろっつてんだろうが!!」
「おわぁっ!!」
俺はあまりの馬鹿でかい声+何かが俺の脳天を強打したのに驚き、飛び起きた。
すると、俺の目の前に俺らが担任がじとーとした目で俺を見つめ、名簿を持って立っていた。
「…やっと起きたか雛月。お前いくら呼んでもビクともせんからつい私も我を忘れ少々本気を出してしまったよ。いや、全く大人げなかったな」
担任は苦笑いしながらぽりぽりと頭を掻いていた。
…本気だったらどうなっていたんですか俺。
ってちょっと待て。その前にだ…。
「おい、茜テメェ!!さてはわざとこうなるように俺を起こさなかったな!」
「…いやね、あたしは起こそうとしたさ。でも、かえでが…」
「♪♪♪~」
いつかのようにわざとらしく口笛を吹き、目線を逸らすかえで。
…だから、吹けてねぇから。
でも、やっとわかったぞ。この事件の黒幕がッ!!それは…ッ!!
「またしてもお前かぁッ!!馬鹿かえでッ!!」
「ふっふっふ…。よくぞあたしが犯人だと見抜いたな。それは賞賛に値するぞ…褒めてやろう」
「いや…茜がさっき俺に教えてただろう。さすが、馬鹿を頂点まで極めただけのことはあるな。こっちこそ褒めてやるぞ」
かえでの売り言葉?に買い言葉で返し、互いに激しい睨み合いが展開する。
「はいストップ~そこまでにしておけよお前ら」
すかさず茜が止めに入る。
「何だよ茜、邪魔すんなよ」
「そうだよ~今から馬鹿春斗をこらしめるところなのに~」
「別にいいんだよ~あたしは。でも、今すぐにでも先生が本気モードにならんとは限らんからな。あたしもまだ血は見たくないからね~」
…おいおい血ってどういうことだよ。どこにそんなもんが…。
俺はふとチラリと横目で担任を見てみる。…っておい、何だよそれ…!!
担任は、眉間にしわをよせながら沸々と怒りがこみ上げるかのように少しずつ赤くなっていた。
いや…そんなことはどうでもいいんだ。その前に俺がツッコミたいのは…。
あの~先生?一体あなたは何をお持ちになってるんでしょうか?それはどう見てもアレにしか見えないのですが…。
もう隠す必要もないだろう先生が持っているアレとはそう……日本刀だ。
っていうか何であんたはそんなもん持ってるんだ?!それにそんなもんどっから出した?!さっきまでなかったぞそんなもん!!
俺の頭がパニック状態で混乱していると茜が小声でこう言った。
「先生はね~全国の中でもトップ座に君臨する剣の達人なんだよ。あたしも太刀筋とかは見たことがないけど、噂では先生の太刀筋は見えないらしい」
いやいや、そういう問題ではなくてだな??
今重要なのはその物騒なもんが当たり前かのようにその手に握られていることなんだ。
太刀筋の前に俺は先生が直視できません。常識、法律を守る気はあるのだろうか??
まぁいいや。もう何でもアリだ。
たまには考えを捨てることも大切だ。何もかもそれが正しいことじゃないかもしれない。
その考えに囚われては真実が見えないということもあるな、きっと、たぶん、メイビー。
「んで気後れしてしまったが…見えないって何でだ?」
「それはね、先生が剣を抜いた瞬間にはもう既に相手は切られていたって…。それもその一瞬の間で…姿も見えなかったらしい。まさに、電光石火の速業だな」
「………」
やっぱダメ、絶対。
常識は大事。守らなきゃダメ。ビバ、平和!!
「それにだ、先生の顔を見てみろ。下からちょっとずつ赤くなってるだろ?あれが怒りが頂点に達し、全体が赤くなると本気モードが発動すっから気をつけろよ」
おいおい物騒なこと言い出すな。
…ってかその前に何でそんな危険人物が先生やってるんだよ。
根本的におかしいじゃないか。
「おっと春斗もう一つ忠告だ」
「何だ?」
…これ以上何があるっていうんだ。
「詮索なんかしないほうが身のためだぞ。そんなことしたら…考えるだけでもおそろしい」
「…わかった言うな。お前の表情見れば大体察しがつく」
だってあの茜でさえ青ざめてわなわなと震えだすくらいだからな。
俺ももっと気をつけるとしよう。
俺はパタパタと急いで席に戻り、何事もなかったように席についた。…今気づいたのだ
がかえではとっくに席についていたみたいだな。こんな時だけ素早いヤツだ。
そして、俺らが席につくのと同時に担任ははっと我に返り、何事もなかったようにいつもの表情へと戻っていた。
「それじゃ、HR始めるぞ」
そして、ひょんなことから担任の新たな一面&裏の顔がわかったところで帰りのHRが始まったのであった。
さぁて、ようやく放課後だ。
…何だか長かったな。今日は特にな…。
朝にヒカリと出会い、そして、ヒカリの勝手な…いや強引の妙な提案によりヒカリは俺をシェルリアの協力をさせるべくこの学園に通うことになった。…しかし、共同生活がどうとか言っていたがあのお子様は一体何をする気なんだろうか。
出来れば俺たちを巻き込まないでもらいたいものだが…ってそれは無理か。
何せあいつは人の言うことは一切耳に入らないし傾けようともしない。もし、入ったとしても自分に不利益なこと以外だろう。まぁ、要するにだヒカリは自分勝手なのだ。
言うならば子供がおもちゃを買ってもらえないと駄々をこねるのと同じで、俺がヒカリたちに協力しないので何とか協力させようとわんわん喚いているのだ。でもまぁ、あいつは見た目ホントお子様なんだが、あの力によって成長を止められてるんだったよな。…確か。
ちょっと待てよ。…っていうことはヒカリって本当はいくつなんだ?激しく気になる。
俺より年上?いや…それは困る。あんなのが俺より年上だったときには何か負けた気がする。おそらく、同世代…俺より年下だろう。そう願いたいものだ。
「…ねぇってば~ハルちゃん!!」
「おわぁッ!!…って冬姫か、何だよ、そんな大きな声出して」
冬姫の声が聞こえ、俺が顔を上げるとそこにはぷんぷんと怒っている冬姫が立っていた。
「何だじゃないよ~。さっきからずーっと一緒に帰ろうって声を掛けてたんだよ~もう!」
「悪い悪い。ちょっと考え事してたもんでな」
しかし、そんなに深く考えてたのか。
「もう~!どうせまた変なこと考えてたんでしょ~」
作品名:第1章 10話 『ボーイミーツガール??』 作家名:秋月かのん