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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章  9話  『色即是空』

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軽く身体の一部が再起不能に陥り、そして意識の境を彷徨い致命傷を負うことになるだろう。…考えただけで恐ろしい。

「あはは…。かえでさんお強いんですね。私、びっくりしました」

ミナは苦笑いしながら俺の額に水道で濡らしてきてくれたハンカチをピタっと乗せてくれた。…あぁ、気持ちい。

「あ、そういえば、冬姫たちは?」

そういやさっきから見当たらんけど…。
もしや、かえでがみんなを…。…ってんなわけないな。我ながら愚かな考えをしたもんだ。

「冬姫さんたちは先に行きました。冬姫さんは何でも委員会の仕事があるようだったので、私がヒナちゃんの側にいますって言って先に行ってもらいました」

「そうだったのか。サンキューなミナ。おかげで助かったぜ」

「…いいえ、そんなことないです。いつもヒナちゃんに助けてもらってばかりなのでそれと比べれば…このくらい大したことじゃないです」

ミナはほんのりと頬を赤らめて、照れているのか両手の人差し指をもじもじさせていた。

「そんなことないさ。俺はミナにはいつもいろいろと助けてもらってるぞ」

「え?私が…ですか?どんなことでですか?」

ミナは心当たりがないのかキョトンとした表情で俺を見つめていた。
まぁな。自分じゃ気が付かないかもしれないな。

「ハハハ。でも、それは内緒だ」

「え~!ずるいです~!そこまで言われたら気になりますよ~!ヒナちゃん教えてくださいよ~!」

ミナは待てっと餌をおあずけされた動物のみたいに、その先のよしっと言う餌をもらう許しを求めるかのように俺に縋ってくる。…まるでチワワみたいだな。

「アハハ。まぁこれはミナの宿題ってことで。ってことで頑張れよミナ。アハハ」

「ぷんぷん~!何だかはぐらかされたような気がします~!」

ミナはぷくっと頬をふくらませてプンスカと怒っていた。
…ミナ、それ怒っているんだと思うが俺から見るとかなり可愛く見えるぞ。
と俺の心の中だけに押しとどめておくことにする。言ったらまた怒りそうだからな。

「じゃ、ヒントをやろう」

「え?ホントですか!?」

ミナは途端にぱぁっと笑顔になる。…ってもう答え出ちまってるんだけどな。
そして、俺はミナの頭に手を伸ばし、頭に手を置く。

「え?」

俺はミナの頭をわしわしと撫でてやっていた。

「あの~ヒナちゃん?…これは一体?」

「これが大ヒントだ」

「これが…ですか?」

ミナはよくわかってないのか可愛く小首をかしげていた。
俺は更に優しくミナの頭をさわさわと撫でてやる。

「ヒ、ヒナちゃん…。えへへ」

ミナは気持ちよさそうににこにこしながら頭を撫でられていた。

「つまりはそういうことだ。ミナ」

「え?…ヒナちゃん、やっぱりわからないですよ~」

ミナは未だに理解できていないらしく困惑して苦笑いしていた。

それはだなミナ。
このように純粋に一喜一憂するミナ、そして何より、その眩しいくらいの純真な瞳で向日葵のような満面の笑みで微笑むミナに俺は救われてるんだよ。

「まぁいつかミナにもわかるときが来るさ。んじゃそろそろ教室に行こうぜ。このままじゃ遅刻しちまうからな」

近くの時計を見ると、時計の針が8時30分をさしていた。HRまであと5分しかない。

「そうですね。せっかく急いで来ましたからね。遅刻しては意味がなくなってしまいますね。急ぎましょう」

「よし、行くか」

そう言うと俺はベンチから立ち上がり、大きく1回伸びをする。
そして、教室に向けて俺とミナは歩き出すのだった…。

「わきゃあっ!」

「うわぁッ!」

「ヒ、ヒナちゃん!?」

今まさに教室に向かおうとしていたとき後ろから何かが俺に突進してきた。
…ぐはぁ、こ…腰がぁ。まだ傷に響く腰にジャストミートしちまったじゃねぇか。

「あいてて…。何なんだ一体…?」

「…ふみゅ~ん。痛いよ~」

俺はゆっくりと後ろを振り返ると、赤いランドセルを背負った女の子が倒れていた。
…って初等部の子だったのか。てっきりかえでがまたとび蹴りをかましてきたかと思ったぜ。

「大丈夫か?もしかして怪我とかしたか?」

俺はその倒れている女の子に話しかけていた。

「うん。大丈夫だよ。ちょっと転んじゃっただけだもん」

女の子はそう言って立ち上がろうとするが、

「痛ぁっ!」

女の子は転んだときに足を捻ったらしく足を押さえてその場にまたふさぎこんでしまった。

「もしかして、足捻ったのか?」

「わからないよ。でも、ここがすごく痛いの。うっうっ…」

女の子は足を捻って足が痛むのか泣き出してしまった。

「ヒナちゃん、取り敢えず保健室に連れて行った方がいいです!私たちじゃどうしようも出来ないですから」

「確かにそうだな」

意外にもミナはしっかりとしていた。

「ほら、その足じゃ歩けないだろ。それに俺がこんなとこで突っ立ってってたせいでもあるからな。保健室までおぶってってやるよ」

「う…うん。ありがとうお兄ちゃん。でもね…」

女の子は急に黙って、もじもじと人差し指をいじりだした。顔は帽子をかぶっていて見えないが何だか照れているようだった。

「ん?どうしたんだ?」

「あ…あのね。おんぶじゃなくてね…だっこがいいの」

「何だそんなことか。そのくらい別にいいぜ」

「ほ…ほんとう~?えへへ♪やったぁ~♪」

女の子はそんなにだっこが好きなのか、俺がだっこしてやると言った瞬間にぱぁっと喜んではしゃぎだした。

「それじゃ、行こうぜ。HRまで時間もねぇし」

「うん♪」

そう言うと俺は女の子をだっこしてやる。…軽いな。たまに明日香もせがんでくるからしょうがなくだっこしたときはもう少し重かったな。

「えへへ♪」

だっこしたおかげで女の子との視点が合い女の子の顔がよく見えるようになった。
…ってあれこの娘…どっかで見たことあるような…。

「う~ん?どうしたのお兄ちゃん?」

「ヒナちゃん?」

うーん。この顔確かに見覚えがあるんだけど…誰だったっけ?昨日会ったはずなのにな。
…ん?って昨日?俺昨日会ったのかこの娘と…。
どうやら俺の脳内コンピューターは覚えてるらしいな。さすがだな俺のハイテクNC。

よし、検索かけてみるか。
と俺が思い出そうと試みていたときにミナがこう呟いた。

「あれ?ヒーちゃん??」

ヒーちゃん?
…あぁ、ミナの元?友達兼今フォーリアと敵対してるシェルリアの魔法使いのヒカリのことか。…ってちょっと待て。

俺はもう一度女の子の顔を見てみる。

「う~ん?どうしたのお兄ちゃん?私のお顔を見つめて…何だか恥ずかしいよ」

女の子を顔を赤らめて、もじもじしながら照れていた。
うーん。確かにそっくりだ。…っていうかヒカリだろ!ってくらいだ。

でも、ヒカリがこんな素直で可愛らしい表情で微笑むだろうか。
少なくとも先日のあいつを見た限りそれはないとはっきり断言できる。
あの人を小馬鹿にした態度、冷徹な瞳、えらそうに高笑いするイメージしかどうしても思いつかん。

そんなヤツとこの女の子を同一人物だと思えるだろうか。
というかこの娘にそれは失礼ってもんだ。