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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章  9話  『色即是空』

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でも、ここは一応訊いておくべきだろう。それが、デフォだからな。

「なぁ、ちょっと訊いていいか?」

「うん?な~にお兄ちゃん?」

「君、もしかして…ヒカリちゃん?」

「えへ♪そうだよ♪…雛月春斗。…フフフ」

「っておいビンゴかよッ!!」

ヒカリは俺の腕からするりと抜けると、俺と向かい合う。…って足は大丈夫なのか?

「おい、ヒカリ、足は大丈夫なのか?さっき痛がってたようだが」

「アハハハ。そんなの演技に決まってるだろ。全然何ともないわ」

ヒカリはいつものごとく腰に手をあて高笑いしていた。
…これだよこれ。ヒカリの俺の中のイメージの。

「って待てよ。それじゃ今までのも演技だったのか?」

あの可愛らしい表情も恥らう仕草も素直な気持ちも…全部。

「フフフ…当たり前だろ。こっちではこういうのが『萌え』というのだろう?だからそれを実践したまでだったが…フフフ、どうやらかなりの効果があるようだな。貴様がこの私だと気づかないくらいだからな。フフフ♪」

まぁ確かに気づかなかったけどさ。
…ちょっと待てよ、それじゃその赤いランドセルも服も…。
…いや、訊かないでおこう。っていうか怖くて訊きたくない。
と俺がよからぬ想像をしていると、ミナが割って話しに入ってくる。

「ヒーちゃんどうしてここにいるんですか?!もしかして、ここで戦いを始めようと考えてるんですか!?」

ミナは普段見せない真剣な表情でヒカリに食って掛かっていた。

「フフフ♪そうだな。ある意味これは戦いとなるかもな。お前と私のな。…フフフ」

「そうはさせません!こんなとこで戦いを始めて皆を巻き込むわけにはいきません!止めさせていただきます!」

「ん?アミーナ…お前は何を言ってるんだ?別に私はここでお前とバトルしに来たわけじゃないぞ」

「え?あれ?で…でも、さっきヒーちゃんと私の戦いになるって言いましたよ」

確かに俺もそう聞こえたんだが…どういうことだ。

「あぁ、それはな」

そう言うとヒカリは俺の方に向き直り、ビシッと人差し指を俺に向ける。…って何だよ。

「雛月春斗よ。私たちシェルリアの力を再び知らしめるには貴様の力が不可欠だ。よって今日から私は貴様が私に協力するよう、そして、貴様をこちら側に引き込むよう私は貴様と共同生活することにした」

「え?」

「…………………………は?」

俺は呆然唖然かつ呆気にとられ、頭の思考能力がフリーズする。
こいつ、今何て言った?俺と共同生活をする?
…はい?なぜにッ!?どうしてそうなるッ!?わけがわからん。

「あの~もしもしヒカリさん。それはどういう意味でしょうか?」

「フフフ…。簡単なことだ。貴様と共同生活することで私が貴様を私にメロメロにさせて関係を築いてしまえばいいだけのことだ。今、貴様はアミーナとべったりでフォーリア寄りだからな。だからそこに私が参加し、貴様たちよりもラブラブな関係を築いてしまえばもうこちら側のもんだとそう考えたのだ。我ながらいい考えを思いついたもんだよ♪アーッハハハ♪」

…こいつ真正のアホだ。ベストオブ馬鹿だ。
力はすごく強くて恐ろしいのに、思考能力はあいつら(かえで&暁)並みだ。
…勿体ない。

「まぁ…だな。それは却下だ」

「何を言ってるんだ!貴様に決定権などない!もう、決まったことだからな」

「はぁッ!?ふざけんなッ!!勝手にそんなこと決めんなよッ!!俺の許可なしに!!勝手に話を進めるなッ!!」

俺は言ってやった。このお子様馬鹿魔法使いにッ!

「フフフ。だから、言っただろ。貴様の意見など関係ない。これは私たちの決定事項なのだ」

な…何か理不尽だ。相変わらず物理法則は通じないな。…あぁ、俺の平穏な日常が…。
さらば、俺の平穏…。グッバイ、俺の平和。
俺はがっくりと肩をすくめる。

「…はぁ。その代わり1つだけ頼んでいいか?」

「ん?何だ?」

「一緒に暮らすのだけは勘弁してくれ」

「ん?何でだ?別にいいだろうそれぐらい」

「ダメだ。俺は生憎一人暮らしじゃないんでな」

「何ッ!?まさか、もうアミーナと…」

「ち…違います!!私はちゃんと自分の家に住んでいますよ!!」

ミナは顔を最大まで真っ赤にして、おろおろわたわたしていた。

「それじゃ何でだ?」

「それはな、俺の妹も一緒に暮らしてるからだ」

「そうか。でも、私はかまわないぞ」

「お前がかまわなくても俺や他のヤツがいろいろと困るんだよ」

明日香だろ、冬姫だろ、姉さんだろ、ミナだろ、かえでは…まぁいいか。
まぁ、この上位4名には確実に迷惑するであろう。特に、明日香や姉さんに、『今日からヒカリも一緒に住むことになった』ってなんか言ってみろ。…考えただけでも地獄だ。

「そんなもんなのか。では、それだけは私が何とかするとしよう」

「そうしてくれると助かるぜ」

俺はその言葉に安堵する。…っていうかそうだ。早く行かないと遅刻する。

「ヤヴァイ!!こんなとこでしゃべってる間にも時間が…。遅刻決定だッ!」

「それなら心配するな。さっき私が時間を止めておいた。だからまだ遅刻せずに済むだろう」

「何だ、ヒカリにしては気が利くじゃないか」

「フン!調子に乗るな。…まぁこれは、さっきの礼みたいなもんだからな」

「礼?…何のだ?」

「フ…フン!!べ…別に貴様に言う必要がないだろうがッ!!」

ヒカリは何だか急に慌ててヒカリに似つかわしく頬を赤らめていた。…何だ?

「それじゃ私はそろそろ行くぞ。またな、ハルト」

そう言うとヒカリはスタスタと初等部の方へ歩いて行った。
…ってお前初等部に転入なんだな。まぁあのなりでこっち来たらやたらと問題だからな。
まぁそんなこといいとして…。

「ミナ、急ぐぞ!このままじゃホントに遅刻しちまう」

「………」

「…ミナ?どうしたんだ?」

ミナは俺の言葉に答えず、何だか上の空だった。

「え?あ、はい。何ですかヒナちゃん?」

「いや、急いで行かないと遅刻するぞって言ったんだが」

「そうですね。急ぎましょうか」

「ん、あ、そうだな」

何だか釈然としなかったが取り敢えず俺たちは急いで教室に向かったのだった。


<<次回へ続く>>ഊഊ 挠