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つだみつぐ
つだみつぐ
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農薬の話

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4.現状への批判




 農薬ギョウザ事件・産地偽装・基準を超える残留農薬の検出などが相次ぎ、「食の不安」が取りざたされている。
 だが、こうしたことは、犯罪であって、農薬問題とは関係ないことなのだ。農薬の真の問題は、全然別の所にある。

 有機JAS法によって、ごくわずかではあるが、「有機JASシール」を貼った農産物も店頭で見かけるようになった。また、有機農業推進法の制定で、西海市を含む多くの地域で有機農業をどう広めていくかが検討されている。

 では、こうして施策はこの国における(先進国中例を見ないほど大量の)農薬使用量を削減したか?
 していない。

 有機農業を推進している地域でも、たとえば、「今後5年間でこの地域における農薬の総使用量を半減しよう」といった視点を持っていない。(わたしが西海町の「環境保全型農業推進協議会」のメンバーだった頃には、わたしの主張により、この方針が採用されたけれど、現在は反故になっている。)
 JASシールを貼った「有機農残物」は実際の流通の中では「高付加価値商品」として扱われている。牛肉に対する「黒毛和牛肉」のように。技法としての有機農業は、農薬・化学肥料多用の現在の農法に対する「もう一つの農法」ぐらいの地位しかない。現状を変革するだけの力を持ち得ない。

 特に有機JAS法による「認証制度」は、ひどい制度である。認証を受け、毎年検査を受けた圃場で生産されたもののみを「有機農産物」と表示することが許され、そうでないものは、「無農薬」表示さえも禁止されている。
 わたしはかつてある認証団体の検査員であった。九州北部の数カ所の団体をまわり、すべての圃場をチェックし、書類の不備を指摘し、トラクターの油漏れにも目を光らせた。「この管理機は、届け出が済んでいません。届け出がないと検査を通りません。それに、非有機の畑でも使っていますが、その場合、使用後水洗いをしなければなりません。その記録もつけて下さい。」などと、指摘をしなければならなかった。そしてこうした認証や認証検査の一切の費用はその生産者の負担になるのだ。有機農業をしているばかりに、膨大な余分の手間とお金が必要になるのだ。農産物価格に転嫁せざるを得ないけれど、そのために余計に売れなくなる。農薬をかけている方は、何の負担もない。この制度が始まってから、有機農業をやめたひとを何人も知っている。
 わたしは腹を立て、2年前に検査員を辞めた。同時に認証を受けることもやめた。従ってわたしは現在、法的には「有機農業者」ではない。わたしのやさいは「有機農産物」ではない。


作品名:農薬の話 作家名:つだみつぐ