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つだみつぐ
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農薬の話

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5.何をなすべきか−わたしの提案




 1.すべての農産物に農薬表示を

 有機JAS法及びそれに基づく認証制度を即刻廃止し、すべての農産物に使用農薬を表示することを義務づける「農薬表示法」を制定する。表示項目は農薬名・目的・散布時期・散布倍率。
 「農薬表示義務除外リスト」を策定する。自然物に近い、あるいは、環境中の振る舞いがきちんと調べられ、環境中で速やかに分解し、無毒になり、分解過程でも有害な副産物を生じない、そういった農薬については表示義務を除外する。このリストは、その時々の最新の知見に基づき、つねに更新される。

 農薬を散布した生産者は、その記録をつけ、保存しなければならない。必要に応じ公的機関に開示しなければならない。
 農薬を使わない生産者は単に、農薬表示シールに「なし」と記載すればよい。 
 これにより、消費者の選択の自由が確保される。その人の考えによって、どれくらいまでの農薬使用ならよしとするのか、あるいは、分解しにくくて環境に残留する除草剤だけは許せない、とか、敏感な体質なので有機リン系農薬だけは、だめ、とか。

 これにより、有名産地ほど大量の農薬を使っていることがばれてしまうから、消費者は地元の小規模栽培のやさいを選ぶかもしれない。地産地消にもつながる。

 この制度が始まるだけで、日本における農薬使用は半減すると思われる。半減しても農業生産性は落ちない。なぜなら、現在使われている農薬の半分は、何の意味もなく使われているから。
 逆に言えば日本農薬工業会や農協(農薬の売り上げが収益に占める割合はかなり多いと思う)から、この制度はつぶされるおそれがある、とも言える。政府がこの制度を立ち上げ維持するには、国民のしっかりした後押しが必要である。。

 そしてこの制度は、農薬を使わない生産者に何の負担もかけないから、無農薬やさいと農薬やさいの価格差は縮まり、比較的安全なやさいの流通、販売が容易になり、消費者も入手しやすくなるのだ。

  2.農薬の害に関する疫学的調査を

 農薬登録の際に動物実験を含む毒性評価はちゃんと行われている。しかし、微量かつ長期の摂取の作用・環境ホルモンとしての作用・化学物質過敏症への関与・環境中での振る舞いなど、まだまだきちんと調べられていない問題は多い。
 だが、問題は疫学的調査が行われていないことだと思う。
 肝疾患・免疫力低下・アレルギーから身体能力・精神疾患に至るまで、できるだけ多くのデータを集め、地域・職業・農業者であれば主な栽培品目などで相関の有無をしらべ、有意な差があるかを統計学的に分析する。特に農業者については詳しい分類が必要である。たとえばリンゴ農家には視力の低下が多い、ハウス農家には免疫力の低下が多い、一方有機農業者にはこうした傾向がない、等(これらは単なる思いつきであって、証明された事実ではない)。いろいろ興味ある結果が出ると思う。そうしたらさらに農薬使用について詳しく調査すれば特定農薬との相関が見つかるかもしれない。非農業者については農地からの距離や空散(農薬の空中散布)の有無などの分類が必要である。
消費者として日常無農薬やさいを食べているか、という分類も必要かもしれない。
まあ、わたしの予想としては、消化器経由の摂取より呼吸器経由の方がずっと問題だと思ってはいるけれど。
 「農薬は安全だ」との主張は少なくともこうした調査の結果を見てからすべきである。

  3.行政は総量削減の努力を

 国は全土にまかれる農薬の総量を把握し、年次推移をしらべ、その削減の努力をすべきである。各自治体もできれば細かく「この地域は少し多すぎるから」などと地域別に削減目標を立てるべきである。
 農薬の話は、なぜか、「ありかなしか」という議論ばかりだ。誰も総量を削減しようと発言しない。
 たとえば有機農業者がたった一回農薬を散布したケースと、ハウス農家が毎日大量の農薬を散布するケースと、どちらが消費者のバッシングが強いだろうか。もちろん前者だ。そんなバッシングがいったい農薬の削減に何の役に立つのか。ほとんど精神論の世界だ。
 しかし、複数の毒物が複合的に作用している際には、たとえばそれぞれを半減した場合、その害がたとえば1/10以下になることは十分考えられる。ゼロにしなくても、ある程度減らせば事実上害を及ぼさない。
 わたしは当面、この国にまかれる農薬の総量を1/100に減らすことを提案している。

  4.消費者は無農薬・減農薬のやさいの選択を  

 以前「毒だとわかっていて食べ物の上に農薬を振りかけるなんて、農民は何を考えているのでしょうか。」と集会で発言した消費者がいた。「スーパーに両方並んでいたら誰だって無農薬の方を買います。」という投書も目にした。
 40年前ならいざ知らず、現在ならほんの僅かの努力で無農薬やさいは簡単に手に入る。自分は何の努力もしないで農業全体が壊滅寸前の中で必死に生きる農業者を非難する消費者をわたしは許さない。
 流通業者も生産者も必死で消費動向を調べている。今後何が売れるのかを。みんな生活がかかっているのだ。もし無農薬やさいの方が需要が多くなればすべての流通・生産があっという間に無農薬にシフトする。
 わずかな虫食いがある、わずかに高い無農薬やさいを95%の消費者は選択していないのだ。両方並べているスーパーは実在する。そこでちゃんと売上を調べればすぐわかることだ。
 すべてのやさい生産者の中での無農薬やさいの生産者の比率は、消費の比率によって自動的に決まる。生産者は遊びでやさいを作っているのではない。誰も売れない商品を作ることはできない。
 そして消費者はその選択のために「すべての農産物に農薬表示を」と要求すべきなのだ。
 現在はどの消費者団体もしていない。

 現時点でこの国のレベルでの残留農薬で具体的に身体にどういう害作用を及ぼしているのかは明らかではない、一部の人が信じるような「農薬の摂取をやめれば健康になる」との主張は実証されていない。もちろん、体質によっては十あり得ることだが。
 それでも、環境に大量に毒物を散布することにすべての消費者が反対して欲しいと思う。そしてそれを消費行動につなげて欲しいと思う。自分のからだのためだけじゃなく、未来を生きる子ども達のために。 
作品名:農薬の話 作家名:つだみつぐ