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つだみつぐ
つだみつぐ
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無農薬ということ

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3.よし、農薬はやめよう




 最後は決断の問題です。7割以上のやさいから残留農薬が検出されていること、何よりも百姓自身の体が痛めつけられていること、環境が取り返しようもなく汚染されること、私達のごう慢な生き方が再生産されることなどをいくら知ってもそれらは判断の材料でしかありません。農薬を使うか使わないか、決めるのは私達百姓自身です。
 「農薬を使わない」という決断は今の百姓にとって重い決断です。どれくらいかっていうと、そうですね、あなたが「衣服を着るのをやめる」という決断をしたとします。その後どういう事が起きるか、少し考えてみてください。

(2分経過)

 考えてくれましたか。それよりは多少軽いでしょう。でも少なくとも、「テレビをやめる」とか、サラリーマンだったら「スーツ、ネクタイをやめる」といった程度では済みません。でも決断が重ければ重いほど、その決断によって人は飛ぶことができます。このエッセイは、その決断が人をどこに連れて行くのか、というのがテーマです。
┌───────────────────────────────┐ 
│ 「減農薬」「低農薬」という立場があります。残留性の低い低毒性│
│の農薬を2−3回使っても残留農薬の点からいえばほとんど問題にな│
│りません。しかし彼らはこの決断を欠くため、生き方の向いている向│
│きが私達とは全然違うのです。 │
└───────────────────────────────┘ 
 さて、「無農薬」の立場に立った生産者が農薬を使わずにやさいを作り始めます。虫も病気も大発生します。冬の根菜類のように、収穫が何割か減るぐらいで済むものもありますが、夏の果菜類のように収穫が皆無になるものもたくさんあります。ようやくできたやさいのきれいなところだけを選んで市場にもって行くと、わずかな虫喰いのために1Kg1円、1本1円という値段がつきます。生産者は直ちに生活に困窮し、周囲からあざわらわれ、家族には「お願いだから馬鹿なことはやめて」と泣きつかれ、畑の中で途方に暮れるのです。「一体どうしたらいいのだろうか。」

 これら全ての事は例えば吾妻町で15年前、8人の生産者が一斉に無農薬に切り替えた時、実際に起きたことです。

作品名:無農薬ということ 作家名:つだみつぐ