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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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帰れない森 神末家綺談5

INDEX|36ページ/40ページ|

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「そうか・・・これだったんだ、」
「え?」
「伊吹くん俺はね、ずっと不思議だったんだ。瑞は一体どうやってこの世に魂を留めているのかって」
「どういうことですか?」
「あの魂は式神となって現世を渡り歩いてきた。長い長い時間をかけて。魂がこの世に留まり続けるには、よりしろが必要なんだ。生きている人間の魂は、生きている身体に宿るだろう?死者の魂も同じだ、何を器にし、物体なり空間なり、媒介するものが必要になる」

瑞は、この櫛にその魂を宿していたのではないか。紫暮は思う。実体を持たない式神だった瑞は今でこそ穂積に肉体を与えられているが、それ以前はおそらく、この櫛をよりしろとしていたのだ。

「より・・・しろ、」
「簡単に言えば、入れ物だ。この櫛をへし折れば、器を失った瑞の魂も消えてしまうということかな」

この櫛が・・・。おそらく穂積がこの書物と一緒に発見し、ここに隠したのだろう。

「瑞・・・」
「・・・たぶん、生前のあいつと何らかの由縁のあるものなのだろうね」
「・・・生前の、」

伊吹がその櫛を大切そうに胸に抱く。

「・・・この書物は・・・表紙に『鏡月記』とあるな。くずした字体から見て、鎌倉時代以前のものだが・・・」
「待って、待ってください。開かないで」

伊吹が突如声をあげるので、紫暮は驚く。彼は青ざめた顔で、きつく目を伏せている。

「・・・大丈夫かい、真っ青だ」
「すみません。覚悟していたはずなのに、いざとなったら怖くて・・・」
「いいんだよ。大丈夫だ」

すみません、と俯いた首筋が、真っ白だった。箱と書物を残し、二人で蔵を出る。

「部屋で少しおやすみ。落ち着くよう、何か温かい飲み物を持っていくから」
「・・・すみません」