俺をサムシクと呼ぶサムスンへ(上)
第3部 年上のパティシエ
きっかけはともかく
いやというほど味見した
あんたのムース
採用水準は
充分クリア
パティシエとしての
腕は認める
一応これでも
ソウルじゃ名の知れた
レストラン
味にうるさい
オーナーの
俺が言うんだ
自信持っていい
履歴書持って
明日来いとは
言ったけど
あれはご愛敬
いや
ムースの腹いせ
いや
必要不可欠なる
事務手続き
腹の中じゃ
とっくに決めてた
突然欠員になった
うちのパティシエ
あんたが後任だ
言っとくが
ソウルホテルの
跡取りの俺に
マンゴームースなんか
投げつけて
無事にすむなんて
後にも先にも
あんただけ
告訴したって
当然なのに
寛大な俺は
そんな無粋な
こともせず
それどころか
あんたは
幸運にも
明日から
うちのレストランの
パティシエなんだぜ
感謝したって
足りないくらいだ
キム・サムスン 30歳
履歴書なんか
正直 何の興味もない
俺より3つ年上か
その程度だ
それより何より
キム・サムスンさんとやら
あんたと俺
これが初対面じゃ
ないよな?
作品名:俺をサムシクと呼ぶサムスンへ(上) 作家名:懐拳