俺をサムシクと呼ぶサムスンへ(上)
第2部 号砲
俺は
あんたの髪を
ちょん切った
そして
マンゴームースを
試食した
ちょん切った理由は
いたって簡単
あんたの自慢の
始末に負えない
ラーメン頭の先っぽが
俺のボタンに
からまったから
俺はとにかく
急いでて
おまけに虫の居所が
ほとんど最悪だったから
そして何より
運よく近くに
手ごろなハサミが
あったから
試食の理由も
いたって単純
突然
髪の毛ちょん切られ
泣き寝入りして
引き下がるほど
あんたが
ヤワでも
お人好しでも
なかったから
幸か不幸か
手製のムースを
あんたが
ご持参だったから
逆上しきった
あんたがとっさに
俺の顔めがけて迷わず
ムースを叩きつけたから
ムースだらけで
息もできない口元を
ぬぐったとたん
飛んできた
あんたの啖呵
「手作りだから
安くはないけど
せっかくだから
タダにしとくわ
せいぜいゆっくり
召し上がれ!」
自尊心と敵愾心の
かたまりが
鉄砲玉みたいに
飛んできた
これが
“よーいドン!”の
号砲だった
この瞬間から
今に至る
俺たちの
長い長い
戦争と平和
栄えあるその
スタートの
輝かしい号砲
威勢がよくて
挑発的で
受けて立たずには
いられない
号砲
作品名:俺をサムシクと呼ぶサムスンへ(上) 作家名:懐拳