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落とし物管理局

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2、ゆうき
 
 彼もまた所謂おっちょこちょいな人なのである。しかし、彼の場合は、少し違う。失くしても気がつかないのである。落し物管理局としては少し厄介な存在だ。なぜなら人は物を失くして、それを後悔して、少しずつそうならないよう成長していくものであるのだが、彼の場合は紛失の認知ができていないため、成長もくそもない。しかし私たちは彼に同じ価値のものを与えなければならないのである。
「当たったー!ついているなぁ!」
 自動販売機についているルーレットでもう一本ジュースが当たったのである。彼は昨日の大学の帰りにハンカチを落とした。案の定、彼は気付いていない。彼の考え方は少し特殊で、普通の人なら探し物が見当たらないとき、ないないと探すが、彼の場合は、どこかにあるだろうと落ち着いてしまう。それでいて探している間に別のことに意識がいくのだからいよいよ探さなくなる。
「今日は良い日だ。帰りにギャンブルでもしていくか。」
 彼は帰りに駅前のパチンコに寄った。1時間もせずに彼は肩を落としながら、パチンコから出てきた。ギャンブルに勝てるはずはない。ハンカチ一枚のみでギャンブルに勝てるのなら、世の中はギャンブラーであふれかえるであろう。ギャンブルに勝つ運の強い人はいる。その説明は少しややこしい(努力管理局も関わってくる)。だが、ギャンブルで大勝ちする人は何か価値のあるものを失くしているのかもしれない。
「調子乗った。ジュース当たったけど、もっと損しちゃった。」
 当たったジュースの残りを飲み干すと、空になった缶を少し離れたゴミ箱に投げ入れた。
がこん。缶はきれいな放物線を描き、ゴミ箱に吸い込まれていった。
「よっしゃ!やっぱり今日は良い日だ!金ないから、カップラーメンでも食べようかなぁ。思い切って二つ食べようか。どうしようか。」
 ゆうきはいつでも幸せである。

落し物管理局としては彼に成長して欲しいという気持ちはあるのだが、彼は幸せそうだし、それはそれでいいのではないかとも思うのである。
彼は何かを失くしているが、毎日小さな幸せを得ているのかもしれない。



作品名:落とし物管理局 作家名:荒岸来歩