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暗躍甲冑の後味
暗躍甲冑の後味
novelistID. 51811
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脳内現実溢れて知覚

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右へ倣え

この先を右へ曲がる。暗い曲がり角。初めての道。こちらからその先は見えない。
でも僕の背中側には窓があるからあちらからは僕の影が見えているかもしれない。迂闊だった。
もしそうだったらどうしよう。そうしたら僕の負けだ。その人に倣って歩かなければならなくなる。
それは困る。僕はどうしても右へ曲がらなければいけないんだ。
あの暗がりに誰もいないなんてことはない。必ず誰かいるんだ。
ああ、俯いていたとか上を向いて歩いていたとかで気付かなかった、とかだったらいいなあ。
僕は既に立ち止まっていて、次の一歩は到底出せそうになかった。


人一人がやっと通れるほどの広さしかない通路は誰かと会った時、道を譲ることは出来ない。
一度無理矢理通ろうとした二人がいたらしいが、互いの背中がつっかえてしまい、どうにもならなくなったという。
だから不運にも誰かと会ってしまった時は二人のうち負けた方が踵を返し、勝った方の進みたい方向へ歩く羽目になるのだ。
勝ち負けの決め方は至極簡潔で、相手に先に気付いた方が勝ち。臆することはない。この道は曲がり角がすこぶる多い。

しかし、あの青年は幸運であり、不運であった。
幸運なのは青年が通っている道には青年以外に誰もいないことだ。
不運なのはその道が正方形を成していたことだ。
そして道を通る誰もが道を外れたがらない。

青年はまだ立ち往生している。