脳内現実溢れて知覚
最終試練
「それで頭を撃ち抜いて下さい、坊ちゃま」
部屋に来るや否や手渡されたのは一丁の拳銃。掌に感じる重みはもう馴染んでしまった。
初めて銃に触れたのは十八の時だった。必ず必要になるから、と扱うための知識と実績を積まされた。
こちらに拒否権はなく、しかしそもそも拒むという選択肢すら浮かばなかったので特に反発することなく素直に従った。
ただ、学んだのは今、手中にあるこの一丁のことのみ。だから構造なら目隠しをして後ろ手に組み立てられるほど熟知しているがこの拳銃の名称は知らない。扱うのが一つだけなら名称なんて必要ない。
銃を扱うにあたって、基本は衝撃に耐えうる体だと言われ、体を鍛えた。当初より身長も伸びたし、体調も前以上に快適だ。
「今までよく耐えてこられました。さあ、これが最終試練です、坊ちゃま」
一度だけ頷くと銃口を眉間に向ける。一呼吸の間もおかず引き金に触れた人差し指に力を込める。聞き慣れた破裂音が耳を擘く。ほんのわずか経って重い何かが落ちる音がする。無音。
最終試練を乗り越えた彼は、だからといって別段何が変わったわけでもなく、今まで通り何不自由なく過ごした。
あの時の部屋には、正確に眉間を撃ち抜かれて頭が粉々になった人形が転がっている。
「それで頭を撃ち抜いて下さい、坊ちゃま」
部屋に来るや否や手渡されたのは一丁の拳銃。掌に感じる重みはもう馴染んでしまった。
初めて銃に触れたのは十八の時だった。必ず必要になるから、と扱うための知識と実績を積まされた。
こちらに拒否権はなく、しかしそもそも拒むという選択肢すら浮かばなかったので特に反発することなく素直に従った。
ただ、学んだのは今、手中にあるこの一丁のことのみ。だから構造なら目隠しをして後ろ手に組み立てられるほど熟知しているがこの拳銃の名称は知らない。扱うのが一つだけなら名称なんて必要ない。
銃を扱うにあたって、基本は衝撃に耐えうる体だと言われ、体を鍛えた。当初より身長も伸びたし、体調も前以上に快適だ。
「今までよく耐えてこられました。さあ、これが最終試練です、坊ちゃま」
一度だけ頷くと銃口を眉間に向ける。一呼吸の間もおかず引き金に触れた人差し指に力を込める。聞き慣れた破裂音が耳を擘く。ほんのわずか経って重い何かが落ちる音がする。無音。
最終試練を乗り越えた彼は、だからといって別段何が変わったわけでもなく、今まで通り何不自由なく過ごした。
あの時の部屋には、正確に眉間を撃ち抜かれて頭が粉々になった人形が転がっている。