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暗躍甲冑の後味
暗躍甲冑の後味
novelistID. 51811
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脳内現実溢れて知覚

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水溜り

けたたましい目覚まし時計の音に無理矢理起こされる。何か夢を見ていたような気もするが、急な覚醒により気配だけを残して消えてしまった。
ああ、と呻きとも溜息ともつかない息を吐く。これから当然のように出社せねばならない事実に気が滅入る。
半ばイラつきながら乱暴に目覚まし時計のベルを止める。静かな空間。ああ、とまた繰り返す。
仕方なしに一階に下りて支度をする。髭を剃って顔を洗い、歯磨き。今日は朝一で会議があるため朝食を取っている時間はない。
スーツに着替え、逡巡した後結局コートを持って家を出る。いつもより早いせいか人気はない。それでも駅に着けばいつからいたのかと勘ぐってしまうほど人で溢れかえっているものだ。
そして人の多さに辟易しながら電車に揺られていくのだ。爽やかな朝、というものは存在しない。疲弊か不満か、それしかない。
夜にでも雨が降ったのだろうか。アスファルトの上には至る所に水溜りがある。それにしては歪な形をしている。まるで水気を多く含む何かを引きずったような。
水面が太陽の光を眩しく反射する。湯気、だろうか。水溜りの上でうっすらと白く揺らいでいる。それらを踏まないように気を付けながら不自然に蛇行しながら駅を目指す。

体が重い。昨日の疲れが抜けきっていないのかもしれない。無意識から来る心理的なものかもしれない。
足が上がらず、膝が曲がらず、歩くというより最早足を擦っている。速度もみるみる落ち、目線もどんどん低くなる。
そのままへたり込んでしまいそうになるが、表層意識だけは前に進んでいる。急がなければ。遅刻でもして上司の小言を聞くのだけは勘弁だ。
焦りとは裏腹にちっとも前に進まない。自棄になって腕も使って進む。ずるり、ずるり。鞄もコートもここまで来る間にどこかへ行ってしまった。
そんなことはどうでもいい。とにかく辿り着かねば意味がない。今は何時だ。腕時計を見る時間も惜しい。そんな暇があったら急げ、馬鹿者。
腕だけでアスファルトを押しやり、その力で進む。しかし膨大な力と比例することなく、ちっとも進まない。
底なし沼の中でもがいているような手ごたえの無さ。ずるり。もう這いずる腕すらない。どうすればいい。こんな時はどうすれば。打開策を。

夜にでも雨が降ったのだろうか。アスファルトの上には至る所に水溜りがある。それにしては歪な形をしている。まるで水気を多く含む何かを引きずったような。
水面が太陽の光を眩しく反射する。湯気、だろうか。水溜りの上でうっすらと白く揺らいでいる。