小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

料理に恋して/カレー編

INDEX|8ページ/37ページ|

次のページ前のページ
 

         14

 うちは大学通りの店で、
 ケータイを解約して、
 カメラとしてのみ使う。

 最初に撮ったのは
 口を大きく開けた、
 自分の顔。


         15

「とぼけた顔がいいよね」

 男子が言ってくれないから、
 自分で言う。
「おっぱいの大きいのに
 匹敵する魅力」

 好きな顔ってのがあった。

 男前なのは認めるけど、
 全然、いいと思うけど、
 好きな顔ってのが
 それとは別にあった。

 他の人から見れば、
「普通」
 でも、好きな顔。
 うちにとっては
 ストライクど真ん中って顔。

「そんなことを言ってくる、
 男子、現れないかなぁ」

 むっちり肉付きのいい、
 女子を好む男子がいるように
「とぼけた顔が好きな男子、
 どこかにいないかなぁ」

 うちは芝生の上を
 コロコロ、横に転がる。

 のり巻きの具に
 なった気がする。

「おっしゃれー」


         16

 関大料理学部は
 もう開店営業していた。

 必死になったり、
 気張ったりしないのが取り得。

 一生懸命マイペース、
 一生懸命ほんわりん。

 何かがあるって、
 何かがなかった。

 何かがない代わり、
 別の何かがあった。


         17

 うちはノートに
 へのへのもへじを描く。

 ないものねだり、
 してもいいけど、
 しちゃいけなかった。

 ないものねだり、
 しちゃいけないけど、
 してもよかった。

 うちはお尻をぽりぽり掻く。

         *

 やり手とか、
 全身で頑張ってまーすって
 感じの人に
 うちは気後れしてしまう。

「すごいなぁ」
 とは思うけど、
 かなり苦手。

 うちはノートに
 へのへのもへじを描く。
 お尻も描く。


         18

 家じゃ食べたことのないような、
「カレーにしましょう」

 メニューの相談会は
 そうやって始まった。

「火曜日はカレーの日で、
 新しいカレーの創作」
 それを週代わりで出すことに決まる。

「どんなカレーにする?」
 料理自慢の女の子らが
 あれやこれやと話し合う。
 家が近所の音大生の子までいる。

 うちは言い出しっぺだけど、
 リーダーなんかじゃなかった。
 みんなからの聞き役で、
 それをまとめていくだけ。

 窓からの風が気持ちいい。
 眠たくなる。

 うちがいなくても
 物事は進む。

 安心して、寝てしまう。

         *

 突っ伏していたテーブルから
 顔を上げ、起きると
「気張らないところがいいのよねぇ」
 と言われてしまう。

 うちは照れ笑いする。
「中浜ががつがつしたら、
 きっと、中浜じゃないわ」
 と理解者がいて、
 うちの目はうるうる星人に。


         19

 うちはがつがつ、綾取りしてみる。

 疲れてしまう。

 ジェットコースターより
 芝生の上でコロコロしてる方が
 断然、好きだった。

 こたつの中で
 みかんの皮をむくのは
 幼稚園からの特技。

 むいては姉や父母に
「はい」
 って渡すのが好きだった。

 むいては友達やその親に
「はい」
 って渡すのが好きだった。

         *

 平和で退屈な時間を
 一緒に過ごせるのが
 本当の友達。

「名言だわぁ」
 大正時代の詩人さんが
 作ったとは思えない。

「もしかして、大正時代、
 って平和だった?」

 突然、うちは
 メニューを思いつく。
 ノートにイラストを
 いくつか走り書き。

 明治カレー、大正カレー、
「昭和カレー」