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料理に恋して/カレー編

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         14

 どこかで読んだ覚えがある。

「人は自分で思ってる以上に
 悪いことをするものだ」

「人は自分で思ってる以上に
 成功しないものだ」

「人は自分で思ってる以上に
 愚かなことをするものだ」

 すべて当っていた。

 大学通りの小さなお菓子屋で、
 一粒十円のあめを買っては
 小銭がなく、
 一万円札をさっと出す。

「おばさん、それだけ?」
「ええ」
「細かいのは?」
 とハゲたおじさんから、
 もろに嫌な顔をされる。

 わたしはキィーッともなれず、
「すみません」


         15

 わたしは強がった。

 強がって、
 それで乗り越えれる時は
 それでいい。

 問題はそうじゃない時。

 弱音を吐きたかった。

 何かを足の裏で踏んでいた。

 かがんでは立って
 辺りをチラッ。

 再び、かがんで
 素知らぬ顔で十円玉を拾う。

「来るのが遅いって、お前」
 十円玉に毒づく。


         16

 お気楽世代の走りだった、
 わたしもいつまでも
 お気楽じゃいられなかった。

 キャンパスは表立って、
 光り輝き、まるで影など、
 どこにもないみたい。

 学生らが楽しくやっている。
 音楽を掛け、ガラスに自分を映し、
 踊ってる女の子ら。
 アカペラの練習をしてる、
 男女混合のグループ。

 輪を掛けて、お気楽に見えた。
 当時にはなかった、
 新しい風景が次々と。

 ボランティアで、
 児童養護施設の子らと
 キャッチボールしてる学生も。

「浅くて最高」
「悩んだりするのかしら」

 わたしのはすでに古い葛藤で、
 この子らにはこの子らなりに
 新しい葛藤があるのかしら?

 いつの間にか、
 色褪せた自分の葛藤。

 葛藤ですら、年を取る。

 お気楽の強さが羨ましい。
 眩しくて、目を細める。


         17

「セピア色なんて、
 いいもんじゃないわ」

 下着だって、
 淡い色より、
 濃い派手なのが好み。


         18

 芝生の上に、
 二人の女子学生が楽しそうに
 寝転がっている。
 ローラインのジーンズなので
 お尻が少し見えている。

「可愛い」
 と思ってから、
「品がない」
 に変更する。

         *

 できれば、
 わたしも出したかった。

 経済学部のトイレに入っては
 周りを確認。

 鏡の前で後ろ向きになり、
 少し出してみる。

 突然、ボックスのドアが開く。

 間抜けた、
 表裏のなさそうな、
 女子学生が現れる。

 惚けた空気感に
 トイレ全体が包まれる。