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料理に恋して/カレー編

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         17

 友情にも色んな形があった。
 理想も現実も千差万別、
 だけど、以前は
 表面上の形は違っても
 助け合うってことで
 裏打ちされていた気がする。
「少なくとも建前は」

 その裏打ちがポロリと外れ、
 その他多くの一つに
 なってしまった気がする。
「助け合う友情観も
 ワン・オブ・ゼム」

 今のわたしに友達はいなかった。
 知人や腐れ縁なら、
 どうにかいる程度。

 自分の生活が反映したような
 友情観にびびる。

 自分の友情観に
 わたし自身がたじたじとなる。

 少し離れて見る。
 指でツンツンしてみる。

         *

「幸福な友情観の人なんて、
 物事の本質を見ない、
 きれい事好きの大バカよ」

 わたしは空いたベンチに座って、
 空を見上げる。

 誰かに思いっ切り、
 否定して欲しくなる。

         *

 友達って何だろう、
 って改めて考えないこと自体、
 幸福な気がする。

 尿意に誘われる。
 最近、トイレが近く、

 トイレで、トイレと
 トイレになっていた。


         18

 哲学科の友人が昔、
 言っていたことを思い出す。

「病気だったり、
 不幸だったにしても、
 そのままでいて、
 幸せに暮らすのが仏教なんや」
「どういうこと?」
「病気が治ることが幸福やない。
 病気と歩んでるままに幸福。
 つまり、見方を変えるんや。
 見方革命」
「大げさな言葉ね」

 二十年後の今頃になって、
 言葉に重みが宿る。
 でも、やっぱり、
「報われる方がいい」

 アメちゃんをくれるみたいに
「悟らない人の尊さ」
 とかも言ってたっけ。
 ベッドで裸の
 わたしに向かって――。


         19

 小中高とあって、
 大学に特に愛着があるのは
 どうして?

 わたしだけのこと?

 まるで、彫り物。
 一生背負っていく刺青。

 化粧の代わりに
 カレーの匂いをまとう女の子が
 小さなお鍋を持ったまま、
 目の前をドタバタと走っている。

「カレーの出前?」
 表裏のなさそうな、
 そのふわふわ顔が
 羨ましいほど――。

 わたしはその後ろ姿に
「頑張ってー」
 と手を振ってしまう。

         *

 人を幸せにするような、
 笑顔が羨ましい――。

 いつまでもいつまでも
 変わらないで
 いて欲しい。

 ずっとずっと
 変わらないで
 いて欲しい。


         20

 夢に敗れて散っていく。
 なら、まだましだった。

 夢に振り回され、
 飼い殺し状態が
 わたしだった。

 父母を喜ばせたかった。
 心配させてること自体が
 親不孝。


         21

 父母が健康で
 長生きしてくれるだけで、
 元気付けられる。

 人生八十年と思えば、
「まだ半分」

 みんなで長生きして、
 平均寿命を
「もっともっと、
 最低、百に上げて」
 と思う。

「退職年齢も八十に」

 希望の光が差す。

 父母の仲がいいのは
 わたしにとって、
 一番の励みだった。


         22

 わたしはエジプトの貧しい地に、
 降り立つ自分を想像する。

 でも、あまり頻繁に
 手紙をして欲しくないし、
 文面も短い方が好まれるみたい。

 黙って、お金だけ寄付するのが
 一番、喜ばれるみたい。
 でも、支援してる手応えがないと、
 Iカップジャパンの
 会員は次々と去っていく。

「善意のやり逃げ」
 そんな言葉があるのも知った。
 何かを施し、
 その時だけ気持ちよくなり、
 後は知らん顔する人たちを指す。

 継続性のなさを嘆いていた。
 次の日には服や食事や旅行に
 散財する人たち。

 矛盾はバランスになっていた。
 矛盾に悩むことなんてない。
「それはそれ、これはこれ」

「一生、付き合う気なんてない」

 黒い欲望でいっぱいの、
 無力な自分がエジプトの
 大地にドレス姿で立っている。

 消費は善? 存在論的悪?

 バランスなんて取れない、
 あの女の子や男の子たち。