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料理に恋して/カレー編

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         13

「芸術学部のある大学は
 カッコいい」

 関大唯一の欠点。

 さっきの涙目の女の子を探す。

 キャンパス中を探す。

 奪って、自分の子にしなきゃ。
 誘拐じゃなく、
「取り返すのよ」

 さらわれた気がして、
 わたしは躍起となる。


         14

 駆けずり回り、へとへになる。

 誇りどころか、
 関大唯一の汚点がわたし?

 頑張るところを間違えがち。
 人生に嫌気が差し、
 自暴自棄になり掛かっていた。

 涙目の女の子の代わりに、
 あの小亀を池に探す。

 もう一度、助けるためには、
「もう一度、不幸にしなきゃ」

 わたしは小学生から、
 釣竿を分捕る。

 ダンプの走る道路に
 小亀を置いては
「命懸けで助けよう」

 自分の命も顧みず、
 小亀を助けてるシーンが
 頭に浮かび、
 わたしは涙目になる。

 あの子になる。

 乳母車の中で、
 手を振る。

         *

 かくれんぼをしてて、
 恐竜のお腹に、
 自分を見つけた感じ。

 わたしは自分に向かって
 手を千切れるほど振る。

 バイバイなのか、
 助けてなのか、
 こんにちはなのか、

 分からないまま、
 手を千切れるほど振る。


         15

「夢に向かって」
 とか、
「夢を諦めるな」
 とか、
 勝手なことを言ってるなぁ。

 夢を見る残酷さ、惨めさ。

 人生を棒に振っている人の方が
 ずっと多いはずだった。

 わたしもその中の一人だった。

 みんなの寝転ぶ芝生の真ん中で
 わたしは両手を広げて
 独り芝居をする。

「ダメでも好きなことをやれて、
 幸せやん」
「そんなことはない。
 安易な慰め」

         *

 他人から見て、惨めだったが、
 本当はそれ以上に無残だった。

 わたしは芝生の端で、
 全身を使って打ちひしがれる。

 キャンパスを公園代わりに使う、
 近所の子供から
 パラパラと拍手が起こる。
「小芝居、もう終わり?」
「続きはないのぉ?」

 二十才のわたしは我に返る。
 一気に恥ずかしくなる。


         16

 偽悪的な元夫が
 詩劇の演出家だったのが憎らしい。
「わたしにこんな恥ずかしい、
 真似をさせて」

 未だに人生を演出されてる?

 恐怖が形となる。

         *

 頑張ったけど、
 ダメだった人の話を聞きたい。

「夢に惑わされるな」
 って言ってくれる人。

 週末起業、週末NPO、
 エトセトラ。
「リスクは最小限に」
 って言ってくれる人。


         17

 夢があり、
 それが目標になっていれば、
 同じ惨めな生活をしていても
 耐えれた。

 問題は
「ああ、無理なんだな」
 と思った時だった。

 惨めな生活が何倍も
 惨めになってくる。

 人生を棒に振っていた。

「誰だって一回や二回、
 心が折れてる」
 なんて、安易な慰め。

 口先だけの親切はあふれてる。
 欲しいのは具体的な救いの手。

         *

 ヨーロッパで売られる、
 高級ブランドの香水、
 その原料となるジャスミン摘みに
 子供の小さな手は欠かせない。

 朝の二時から始まる花摘みの中、
 悲惨な暮らしを強いられる、
 エジプトの女の子が
 写真の中で微笑んでる。

 月に三千円だけで、
「ほったらかしにして、
 ごめんね」

 五千円にしたら、
「わたしの運気も上がるかしら」

 いいことを
 させてもらったこと自体が
 ご利益、なんて思うほど、
 人ができてないわたし。

「やっぱ、現世利益」

 もしかして、わたしって、
 神仏頼みに走ってる?