花は流れて 続・神末家綺談4
願いは一つ。揺るがない。何千年と願い続けてきた。それを叶う日を願って、こうしていくつも時代を超えてきた。
「・・・それが約束だ。おまえと、俺との」
「伊吹と生きる未来を捨てて?」
「・・・・・・未来はほしくない。俺は、過去を贖(あがな)ってもらうのだ」
思い出せ。思い出せ。思い出せ。
「俺を、俺たちをこんな目に合わせたおまえたち一族に、贖ってもらう。それが、約束だ」
思い出せ。
自分がどうして生まれて、どうして死んで、どうして式神となったのか。
ともに生きる未来など。
そんな選択始めからありはしない。
(忘れてはいけない。俺はなんのために、穂積というお役目が現れるまで神末に仕えてきたのかを)
伊吹の笑顔に霞んでしまう。手の温かさに消えてしまう。
惜しんで慈しむことがこんなにつらいなんて知らなかった。
それでも瑞が願うのは、伊吹との未来じゃない。ともに生きる時間じゃない。
作品名:花は流れて 続・神末家綺談4 作家名:ひなた眞白