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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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花は流れて 続・神末家綺談4

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目を覚ませ



駅のホームには誰もいない。小さな田舎の駅だ。隣町へ向かう駅だが、今夜は高校生やサラリーマンの姿もない。りりり、と草むらから虫の鳴き声が聞こえてくる。ベンチに座り、朋尋は一人電車を待っていた。

彼女が待っている。あの河で。寂しさを抱え、後悔と自責の念で自ら命を絶ってなお、救われることなく孤独の中をさ迷い続けている。

(行かないと・・・早く・・・)

彼女に会える場所。朋尋は一人、そこに向かおうとしていた。もうすぐ電車が来る。あの場所で、きっと彼女に会える。会ってようやく、彼女の魂を癒すことができるのだ。

「・・・あ、」

足音に顔を上げた朋尋は、そこに信じられないものをみた。

「伊吹・・・」

それは戸惑うような表情を浮かべた親友の姿だった。どうして、と朋尋は驚きを隠せない。

「朋尋、行っちゃ行けない」
「どうして・・・ここだってわかった?」

誰にも告げずにきたはずだ。邂逅の場所は朋尋と彼女しかしらないはずだ。図書室に立ち寄ってきたが、やりとりはすべて消されていた。彼女の「会いたい」という返事以外は。

「この本が導いてくれた」

伊吹が取り出したのは、あの本だった。朋尋が書庫で見つけた、ふるぼけた一冊。どうしても気になって、開かずにはいられなかった本。彼女を見つけた本。

「寄贈元の蔵書印は、隣町の図書館になってる。増改築の際に蔵書整理をして、近隣の小学校に配布したんだろうって瑞は言う」

瑞・・・。彼も噛んでいるのか。すべてお見通しというわけだ。