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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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花は流れて 神末家綺談4

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これは悪夢に違いない。あの子の・・・自転車とかばんが落ちているなんて。
まさか弟が、あの化け物のように咆哮する濁流に飲まれたなんて。

周りの大人のざわめきが遠くなる。

夢だ。嫌だ。わたしの弟が。

――姉さん、無理して友だち作ろうとしなくていいよ
――学校以外にも、楽しいことはきっとある
――僕が図書館で、借りてきてあげる。姉さんが読みたがっていた本、見つけたから・・・

本が落ちている。雨に濡れて、泥に汚れたそれを胸に抱く。わたしが読みたかった本だ。

優しい弟。たった一人の弟。なぜ。わたしのせい。どうして。許されない。

遺体は見つからなかった。わたしの手元に残ったのは、あの本だけ。

記憶の中の雨がやまない。優しい声が消えない。
冷たかったろう。痛かったろう。いまもきっと苦しいだろう。
一緒に逝こうね。一人にはしないよ。

わたしはガードレールから、弟を飲み込んだ谷底へと身を躍らせた。そこに弟が待っているのだと信じて。






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