花は流れて 神末家綺談4
してはいけない返事
境界を見失ってはならない。
それは曖昧で。
それは触ることもできず。
それは目にも見えないもの。
それでも。
こちらがわとあちらがわを隔てるものとして、いまも此処に確実に存在している。
こちらとあちら。此岸と彼岸。生者と死者。現世と常世。
それらは常に隣り合っていて、手を伸ばせばすぐそこにあるものだ。
だが、境界を見失ってはならない。
互いの領域を侵してはならない。
生者は死者を望んではならない。
だけど、触れたくなったらどうすればよいのだろう。
会いたくなったらどうすればいいのだろう。
祈るだけでは足りないときは。
思い出すだけでは満たされないときは。
きみに会いたい。
きみに会いたい。
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作品名:花は流れて 神末家綺談4 作家名:ひなた眞白