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夏の終わりの夕暮れは、秋を迎える静けさと寂しさとが入り混じっている。風の匂いがもう、昨日とは違っているようだ。木々のざわめきも、星のきらめきも、流れる川の音も、花の香りも、すべては秋のそれへと変化していく。

「もうどうしよう、ばか」

伊吹が半べそをかきながら座卓に向かってぶつぶつ言うのを、涼しい風を感じながら瑞は聞く。

「ばかって俺に言うンじゃないよ」
「だってもう来週から学校なのに」
「まだ間に合うってば。他のは終わったんだろ？」
「昨日までに終わらせる予定だったのにー」
「真面目だなァ」

宿題なんて、真面目にやっているのはうちの伊吹クンくらいではないか、と瑞は半ば本気で思う。それくらい、この宿題というものが理解できなかった。子どもは遊ぶのが仕事ではないのか。休み中に勉強なんて、馬鹿馬鹿しい。

「できた！はい、最後のページにおうちのひとのコメント書いて！」
「どれどれ。ええっ、もう来週ぶんまでやったのか」
「早く片付けてすっきりしたいんだよー」

渡された自由帳を受け取る。これは「自主勉ノート」と言い、一日一ページ、自分で課題を自由に決めてこなすもの、らしい。これを夏休みの途中まで続けていた伊吹だったが、先日の調査や、京都での観光の間すっかり忘れており、終盤になって思い出して慌てて埋めたというわけだ。

計算、漢字、新聞の切り抜きを貼り付けての感想文･･･。

「真面目だな本当に」
「真面目にやんなきゃ怒られるんだよー」