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荒北の呟いた言葉に、光忠と石切丸の視線が集まる。けれど、荒北は二人に反応している余裕などなかった。
蜘蛛の糸のように細く、たよりない。けれどそれは彼女がまだ生きているという証。喉の奥が熱くなり、目の奥が痛む。舌先が痺れ、背筋が震える。電撃のように駆け抜けたそれを歓喜と呼ばずしてどうするのか。
彼女が、アキが、この先に居る。沸き立つ感情を理解しないまま、荒北は自分の嗅覚を信じて走り出した。



※君の香りだけは忘れなかった
2015/10/02