アキちゃんまとめ
だが、その小さな手が自分の指を、手を、握り返してくれる時の感動を、荒北はまだうまく言葉に出来ない。大人とまったく同じ構造をしているのに、大人の庇護がないと生きていけない。か弱くて、寂しくて、ただ愛おしい。きっと自分にも子供がいれば、同じように思うのだろう。荒北は車から降り、後部座席からそっとアキを下ろしてやる。ぎゅうっと握られた手のひらは、何を掴もうとしているのだろう。
「アー……オレもヤキが回ったよなァ」
まだ結婚もしていないのに、こんなに所帯じみた感想を抱いてしまってはいかがなものか。荒北は自分自身に苦笑しながら、アキを起こさないようにそっとアパートの階段を上っていく。小さな怪獣は、今や妖精に取って代わっていた。
※仕切り直しの登園では頑張ったことでしょう
2016/03/25