恋しいよ、ダーリン
「学校は変わるの?」
「うん、さすがに通えない距離になっちゃうから。」
ああ、ふぅん、そう。
私は機械的に返事をした。
転校、引っ越し。
衝撃を受けると雷が落ちたみたいに感じるらしいけど
私は今、それがわかるようになりました。
元々、私は彼女が嫌いだったわけだし
おかしな話かもしれないけど。
でも、突然の話を私はよく理解できないみたい。
恋だとか、そんなものを歌う女性ヴォーカルの声が右から左に流れていく。
やだな。
いや。
いやだよ。
ぎゅっと胸を掴まれたみたいな嫌な気持ちがする。
「さみしい?」
鈴が鳴るみたいな澄んでる声。
彼女が何でもないみたいにして
わたしに衝撃を落としたくせに
そんな風に認めたくない気持ちをきかれるの。
ねぇ、なんでそんな声でいうのよ。
唇をぎゅっと噛んだ。
からからに乾いてしまっていて
すごい気持ち悪い。
「・・・びっくりした。」
ちらちらと彼女の顔を盗み見ようにも
居心地の悪さを感じて、部屋の隅っこに目線をそらす。
ピンク色のテディベアがこっちを向いてハローって言ってる。
こっちみんな!って気分ですけどね、今。
「・・・わたしはねぇ、さみしいよ。」
ぐいって引っ張られて、手と手が絡まるみたいにして手を繋がれた。
彼女の手は私より一回りくらい小さくて、真っ白で柔らかい。
今まで一度もそんなことして来たことのなかった彼女の
突然の行動に私の血管は血を激しく送っちゃったみたいで
心臓がバクバクする。
変だ、私。
「え、ちょ、はずかしい!」
「いいでしょー。もうこんなことするのも後ちょっとだから。」
その声はちっちゃくて、あんまり寂しそうに彼女が言うから
非難するみたいに声を出したけど
私は結局されるがままです。
「ね、わたしのこと嫌いだったでしょ?」
「えっ?」
知ってたんだよー。
だっていっつもわたしのこと嫌いそうな顔して見てるんだもん。
実は、すんごい傷付いたんだから。
わたし、初めてあったときから仲良くなりたいなーって思ってたのに。
一目惚れだったのになー。
あのこと仲良くなったら、きっとずぅーっと楽しいだろうなって。
早口に彼女は色々喋った。
私が全然憶えてないことや話をたくさんいった。
私は嫌っていたことを知られていたことに驚いたのと
彼女が自分をそんな風に見てたことにびっくりして
全然言葉を挟めない。
なんで、私のことなんかそんな風に見てた、の。
「・・・もっと一緒にいたかった、のにね。」
ぽつんとそういった彼女の肩が震えてるような気がして
私はぎゅっと手を握った。
温度が肌から伝わってくる。
水の膜が目に張り始めていて
乾いた唇を少し舐めた。
ねぇ、ねぇ、なんでそんなこというの。
「わ、私だってもっと一緒にいたかったよぉ。」
認めてしまいたくなかったのに!
涙がいっぱい落ちてきて、ぼろぼろぼろぼろ。
さみしい、さみしい、さみしいよ。
ねぇ、ずっと一緒にいてよ。
もっと色んなことしたかったよ。
ずっとそばでわらってたかったよぉ。
彼女は私のことをぽんぽんって
小さな子をあやすみたいにして撫でてる。
嗚咽がいっぱい溢れだしてきて
わけわかんなくて
涙のしょっぱい味だけが広がった。