恋しいよ、ダーリン
わたしね、転校するの。
彼女は何でもなさそうに言った。
よって私はその言葉をわかるのにちょっと時間がかかった。
「っ、転校しちゃうんだ。」
「うん。来月に。」
もたれかかってる彼女の暖かい体温がシャツ越しに届く。
片方ずつかけたイヤホン越しに彼女の好きな音楽が流れてて
彼女の部屋のマットの上、二人でもたれかかり合う。
考えもしなかった、ちょっと前までこんなこと。
いつの頃からだっけ、この部屋に通うようになったの。
ぼんやり遠くを見つめて思い出してみる。
私はずっと彼女のことが嫌いでした。
彼女はいつでもクラスの中心にいて
誰からも好かれる存在。
かわいくて、花みたいに笑って
そんなきらきらした光が眩しくて
自分とはかけ離れた存在に感じて。
ぱたぱた、夏の生温い風を扇ぎながら
彼女のグループのきゃらきゃらした笑い声を聞いて
忌々しげに見てました。
自分が嫌われてるような気がして
(とんだ被害妄想癖)
私は彼女が嫌いでした。
もちろん、ほとんど喋ったこともなくて
でも、なんの拍子か、気まぐれか
彼女はその花みたいな笑顔を私に向けてくれるようになった、という。
やっぱり、変。
だいきらいだったのに。
今、こんな風にしてることがおかしいんだ。