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瀬間野信平
瀬間野信平
novelistID. 45975
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骨折り男とシルクの少女

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見るなと言われれば人はどうする、目を手で隠す、そういう事ではない。

見たくなってしまうのが心情というものだ。

では関わるなと言われたらどうか。
結果は目に見えている。


僕は重苦しい小屋を出て町の入り口に向かった。

何をするでもない、何が出来る訳でもない、ならば好奇心のまま行くところへ行く方が何をするより理にかなう。



☆骨折り男とシルクの少女★



僕の町はさして大きい町ではないが、町の入り口には大きな大きなハシバミの木がある。
町の言い伝えではこの木を中心に皆が集まって町が出来たと言われている。
今は町の入り口にあるが、昔から大きな木であったのだろう。
大きいが枝がしっかりと横に広がり、木陰がたっぷりとある。
こんな病気の渦巻く前は行商人が休んでいたりするものだ。
今は別、人は外にいるが活気とはかけ離れた状態。
病気が蔓延しているとはいえこの村ではまだ死人が出ていない。
ただ一人僕の父を除いては。
部屋にこもろうとかかる可能性は変わらないのだからと外出する人もいる。

そんな外に出ている人も僕の姿を見ると家へ駈け戻る。

疫病神。

「……慣れたけど。」

元より父が居た頃だってそう変わらない。
祖父の代に村へ入り、祖父が村に尽力した、具体的には水車を建設した。
ただそれだけ、村人の大半が一生をここで終えるような村では新参者もいいところだ。
祖父の労から水車の管理係になってはいるがやはりどこかよそよしい。
畑を持たず自分で耕さない家に、人々は小さな羨みと大きな軽蔑しかよこさない。
ただでさえそんな様子だったから父が疫病で死ぬと状況は酷くなった。
先ほどのパン屋の大将のように出ていかせようと脅迫や先導する人もいれば、関わる事そのものを恐れ、水車小屋に麦を持ってこない人もいる。
味方がいないわけではなかったが疫病が流行れば流行るほど、その人達が遠ざかっていくような気がした。

「げっ、やっぱり見に来ちまったのかよおめぇ。見に来るなって言ったろ。」

……そうでもなかった。
馬車から降りた行商人がこっちに向けてわざわざ嫌な顔を作ってくる。
もう町の外れ、馬車の行商人にいつの間にか追い付いてしまったらしい。

「いや、君が失恋した相手がどんな感じか見たくてね。」
「……おめぇ実は性格悪りぃだろ。」
「あいにく相手をしてくださる数少ない奴にナメられる訳にはいきませんのでね。」
「うっせぇ小麦の値段上げんぞ。」
「それは待って。」

下らないことを言っていたが彼の様子が何やらおかしい。

「そんな事より見ろ、あれ。」

行商人が顎でしゃくった先には、まさしく彼が光の速さで振られた女性が

見えない。

見えたのは誰かを何人かの男が取り囲む光景だった。
取り囲んでいるのは町の男、付け加えるならあまり柄の良い連中ではない。

「……どういう事だ。」
「どうもこうも、疫病神が増えちゃかなわんとかどうのこうのと言って突っかかってんだよ。排他的にも程があるわな。」

彼が先ほど馬車から降りた後に腕まくりをしたのも憤慨しているのだろうか。
そして僕もあまりいい気分はしない、違うとしても疫病神と呼ばれる一人として。
行商人が告白したということは女性、その人を柄の悪い男が囲むといったらお世辞にも安全とは言えない。
そしてその光景を止めようとする人はいない。
他人が怖いしかかわり合いになるのも怖いのだろう。

という訳で僕もうでまくりをしておこう。

「さて、殴り込み行くかいあんちゃん?」
「……今多少自暴自棄だから君に加勢するよ。体を動かさなきゃ始まらん。」
「そうこなくちゃ正義の味方。」

行商人は馬車を柵に止め、一団に突撃していった。
因みに加勢はする気だが主戦闘は任せた。
理由は人が誹謗中傷されるのも嫌だが、殴られ怪我するのも嫌だから。

……やはり僕は少々性格が悪いのだろうか。



☆骨折り男とシルクの少女★