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最後の孤島 第2話 『世界一の国から』

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「……以上で御説明を終わらせていただきます。何かご不明な点はございますか?」
「いや無い。君は話し上手だね」

 ジョー主催の金融商品説明会は、1時間以上も行なわれた……。話の長さは、長老と変わらないぐらいだ。私とジョーは何度も席を外そうとしたが、抜け出すタイミングをつかめず、結局最後まで聞かされた……。
「ありがとうございます。……それでですね。ちょっとインターネットか電話を使わせていただきたいのですが、よろしいですか?」
どうやら、ジョーは島の外と連絡をしたいようだ……。どうせ、迎えを頼むか、ビジネスの連絡といったところだろう。
 しかし、ネットや電話はもちろん、無線すらも使えないことを彼が知ったら、私ぐらいひどく落ち込むに違いない……。私もまだ、完全には状況を受け入れられていないぐらいだ……。
「……インター……ネット?」
長老は、この島で最高齢の長老らしく、インターネットが何なのかも知らないようだ。
「これは失礼を。では、電話はございますか?」
ジョーが、人をバカにする表情を一瞬するのを、私は見逃さなかった……。
「電話はあるが、どこにもつながっていないぞ?」
長老は笑いながら、近くの机の下から、古ぼけた黒電話を引っ張り出した。ホコリが被った電話機にぶら下がっているのは、途切れた電話線……。
「ご、御冗談を!」
ジョーは、長老にからかわれていると思ったようだ。私も最初はそう思ったから、冗談を言っていると思われても仕方がないと思える。
「ワシは冗談など言っておらんよ? この島に、外への連絡手段は無い」
笑うのをやめた長老が、真剣な表情と口調でジョーに告げたので、彼は信じるしかなかった……。だが、この島から出ることは諦めきれないらしく、
「それなら、いくらか人手を貸していただけませんか? 私の船を、海へ戻したいのです」
自分の船でこの島から出るつもりのようだ……。私とダニエルは、思わず顔を見合わせる。

 私が聞いた話を、またまとめてみると、この島からの脱出は絶対に不可能らしい……。船や飛行機で脱出を試みた人は何人もいるが、全員が島に戻ってきたとのことだ。生きて戻ってくるのはいいほうで、たいていは死んで戻ってくるらしい……。
 生きて戻って来た幸運な人たちによると、いきなり見えない壁に跳ね返されるらしい……。その不思議な壁は、島の周囲を完璧に覆われているらしく、突破口はどこにも無いようだ……。