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最後の孤島 第2話 『世界一の国から』

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 上司との電話を終えたわたしは、また気持ちが落ち着かない嫌な気分に陥る。今の電話のときに、他の相談事はもう無いのかと尋ねればよかったと後悔した。
 わざわざこちらから、何か相談事はありませんかと電話をかけるのは変な気がしたが、これ以上嫌な気分のままでいるのはごめんだった。
 さっそく、先ほどの上司に電話をかける。

   ツー ツー ツー

 だが、電話はつながらない。呼び出し音は鳴らず、不通であることを告げる無機質な音が鳴っているだけだ。
 そこでわたしは、スマートフォンの液晶画面を眺める。煌めく太陽からの日光が一瞬画面に反射し、思わず目を背けるしかなかった。

 アンテナマークにアンテナは1本も立っておらず、ただ圏外とだけ表示されていた……。ついさっき、特に雑音も無い状態で電話を使えたのにだ……。わたしは首をかしげるしかなかった。
 しかも、船に積んである無線機も通じない。壊れているようには見えず、無線機が圏外になることもあるのだろうかと思うしかなかった。
 今思えば、このときすぐに帰っていれば、こんなことにはならずに済んだのかもしれない……。



 ……こんなこととは、どこかの島に流れ着いてしまったということだ……。
 わたしは今、リゾート地ではなさそうな島の海岸の砂浜にいる。正確には、「砂浜に乗り上げたクルーザーの上」にいるわけだが……。

 あの後、これは一時的な圏外だろうと思ったわたしは、午睡を取るために眠ってしまった。
 しかし、1時間も経たないうちに、急激な嵐に叩き起こされた……。キャビンの中で寝ていたわけだが、強烈な音が天井から大音量で降り注ぐ。音だけでなく振動もひどいもので、踏ん張って立つことがやっとなほどだ。

 人間の本能からなのか、このままここにいてはいけないと感じた。わたしは急いで、クルーザーを発進させた。
 だが、既に手遅れだったらしく、舵がまったく効かなかった……。それでもわたしは、必死に操縦しようとしていたのだが、結局ここに座礁してしまったというわけだ。クルーザーがまるで、島に吸い込まれるかのような動きをしていたのは断言できる!