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天月 ちひろ
天月 ちひろ
novelistID. 51703
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AYND-R-第三章

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「けど、私はリーに勝手についていくって
 決めたんだからね?」

ミルファルはウインクをして二人に言った。

「ふふ、リーはあたしの剣の師匠。師匠あるところに
 弟子はいるものだよ」

笑ってミクリィが言った。

「あ、あうあうあう……」

セイファは何も言えずにうろたえていた。
が、

「……り、リーさんには世界をす、救ってもらわないと……っ!
 そ、それまでお役に立ちたいって、お、思います……っ!」

と、セイファも言った。

「本当に「それまで」なの?」

それにすかさずミクリィがセイファに聞いた。

「……あ、あう……っ」

今度こそ、セイファは何も言えなくなった。

「……世界を救って、そうしたらリーは……」

言って、ミルファルは気づいた。
そして、二人も気づいた。

リーはこの世界の住人ではない。
任務を遂行した後は、元の世界へと戻るのだろう。
三人を置いて。

「……リーは、どうするつもりなんだろう……?」

ミクリィが発した言葉に、二人は答えることが出来なかった。
リーを無理矢理引き留める事は出来ない。
それは、リー自身の心しか、知らないことだった。






「……以上で報告は全てです」

「…ありがとうございます」

三人がお風呂に入っている頃、リーはイルからの
調査報告を受けていた。

大体が事件に関わりのありそうな事や
この世界において、まだリーが知らない事
そして、これから乗り込む商人の屋敷の見取り図など
様々だったが、一つだけ例外があった。

そしてそれは、この町に着いたときのミクリィに抱いた
疑問につながるものであったが、リーはそっと
その事を心にしまうことにした。
イルにもセイファとミルファルに、その事は
言わないように言った。




翌日、一行は情報収集を始めた。
夕方近くになって、ようやく宿に全員が戻ってきた。

どうやらセイファが薬を売りつつ情報を集めていたところ
町の自警団を名乗る男達が現れ、言いがかりをつけられ
危うく連れ去られそうになったとか。

一緒にいたミルファルのおかげで何とか逃げれたが
宿に入るところを見られないように
逃げ回っていたらしい。

そして今回ミクリィと一緒に回っていたリーにも
この町の治安の悪い情報がいくつも入った。

「自警団自体は本当よ。けど、中身はただの野獣ね」

ミルファルは軽く鞭を宙に振りながら言った。

「あ、あまりここに住んでいる人達は豊かでは
 ないようです……。く、薬代がここでは高いのでしょうか
 す、すぐに私の薬が売り切れました……」

セイファは震えながら言う。
その後に追い掛け回されて怖かったのか。

「……市民の困窮がここまでだなんて……」

ミクリィがいつもののんきさを出さずに、真剣に言った。
だが、その言葉には深みがあるのを
リーは知っていた。

「…城下町だけあって、すなわち城の者がここの政治を
 行ってますが、それも穴だらけで、市民から資金を巻き上げ
 なおかつ目的の大商人と癒着しているようです」

ミクリィの肩が一瞬震えた。
セイファとミルファルは、それが怒りからくるものかと思った。
だが、リーはそうではないと思った。
思いながら、ミクリィに悪いと思った。

思ったが、ひける事ではない。

「…あまりこの町に長時間滞在するのは危険かもしれません。
 これより、早速大商人の屋敷を調査します」

セイファとミルファルはうなずいた。
だが、ミクリィは顔色が優れず、動かなかった。

「……ミクリィ、大丈夫ですか…?」

思わずリーはミクリィに問いかけた。
はっとしたミクリィは

「だ、大丈夫、平気。……うん、ちゃんと調査する」

とリーに言った。
リーは少し心配だった。



大商人の屋敷は豪勢であり、なおかつ警備も厳重であった。
番犬や用心棒とみられる大男がうようよしている。

そんな中、リーは三人に、今回は消臭効果もある隠密の術を
かけると、一緒に屋敷の中に忍び込んだ。

さすがに人が姿を消せるとは思ってないのだろう。
それに消臭対策もしてある。
用心棒も番犬も問題なく、一行は屋敷に忍び込んだ。
それに、内部はイルのおかげで把握済みだ。

「…まず、ここの大商人がどんな品を扱っているか
 知る必要がありましたが…、先ほどの調べで
 すでにここに例の薬があることは判明しています」

リーは声を押さえて三人に言った。

「…なので、まずはここの商人が他にどのような品を
 扱っているかを調べます。皆さん、相手に気付かれない
 ようについてきてください」

三人はリーの指示にうなずいた。

リー達はまず、イルに言われた商品保存庫に忍び込んだ。
目の前には商品と思われる品がいくつもある。

「しっかし、いくらリーの魔法があるからって言っても
 こんなに容易く入れていいのかしら?天下の大商人とも
 ある屋敷が」

ミルファルは呆れたように言った。

「…今までで私の術を見破ったのは、あなたが
 初めてでした」

とリーは言った。
ミルファルは喜んだ。

「あ、あれ……?こ、これって……」

セイファが何かに反応した。
見ているのは小さな粉末である。
思わず三人がセイファの元へ集まる。

「……ま、間違いないです……。こ、これって
 む、昔、おばあちゃんが私に気を付けるようにって
 す、すっごい注意してくれたもので……」

セイファは真剣な顔をして説明する。

「い、今では危険指定されていて……ど、どこでも
 買うのも売るのも禁止されている……猛毒の粉です……」

「つまり、国禁の品ってことかしら?」

セイファはうなずいた。

「こ、これだけの量で……す、少なくても数百万人の
 人の命を危なくします……」

三人は驚いた。
わずか10グラム程度の粉が数百万人の生命を
脅かすという。

「そ、それに……そ、その横にあるのが、それにそっくりな
 粉で……よ、よく間違えてしまうけど、じ、実際は
 何の効果もない粉です……」

セイファはわずかな違いから粉末を
見破った。

「それだけじゃないみたいだ」

ミクリィが並べてあった数本の剣のうち、一つをつかむと
それを引き抜いた。

「これって、幻と言われてる名剣にすっごい似てるけど……
 全部偽物みたい」

軽く振ってミクリィは確かめた。

「……あら、そうそう、これよこれ」

今度はミルファルが、棚の中から例の薬を探し当てた。

販売禁止の猛毒の粉と、剣と、例の薬、そしてそれらの偽物。
これ以上調べるまでもなく、この商人がどんなことをしている
のかが見えた気がする。


一行は、それから館の中を探索した。
すると、途中に地下へと続く階段が隠し扉の中にあったので
降りてみた。


すると、そこには牢獄があった。
重い空気が辺りに漂っている。

そこには大勢の人がいた。
老若男女問わず数十名が牢に入っている。

「こ、この方々は……?」

イルは素早く検索した。
それによると、元はこの町の城で
働いていた者が大半だという。

なぜ城に勤めていた者が商人の家に捕まっているのか。
リーは考えた。
そして、その者達の何人かに、ミクリィは
作品名:AYND-R-第三章 作家名:天月 ちひろ