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メドレーガールズ

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  メドレーリレー



 今年も大会の最後を飾る種目はメドレーリレーだ。去年は男子が最後だったから、今年は女子が最後になる。
 それぞれ個人戦を終えて集まってきた私たちは控え室で四人固まって、係員が呼びに来るのを待っていた。プールでは男子のメドレーリレーが始まったころだ。大きな歓声がここまで聞こえる。女子水泳部しかない私の学校や女子校の聖橋には無縁だが、その他の学校の生徒はそわそわした様子でモニターを見ている。私たちは他校と較べていい意味で次の競技に集中できる状況にあった。
 
「えーっ、ここでチャントの練習?」
 メンバーの四人、私と律っちゃんと真由とのんたんは顔を向けあっていると律っちゃんはいきなりそんなことを言い出すので、私は思わず返しの言葉が出た。
「ここまで来たら開き直ろうよ、笑ってようよ」
冗談で言ってるのでは無さそうだ。結構真顔で私の目を見ている。
「賛成」冷静なのんたんがすぐに同意した。
「それもアリだよね」真由も試合直前にふっ切れているのか、笑顔が見える「帆那、楽しもうぜ」
 真由に二の腕を指でグリグリされると、魔法が解けたように顔がほころんだ。
「じゃあ、のんたん、真由、帆那、私の順で最後は全員で……ね」
 顔の筋肉だけでなく、全身のこわばりが解けていく感じがした。時おりこぼれる笑い声、控え室で笑っているのは浦中の四人だけだったので、正直その姿は浮いていた。
 
「メドレーリレー女子の選手はプールサイドまでお願いしまーす」

係の生徒が最後の選手を呼んだ。
「さあ、本番だ!行こう、みんな」
 私たちは律っちゃんの掛け声で、この日のために用意した「一蓮托生」を水着の上から着て控え室を出て、光と音がざわめく会場に向けて歩き出した。緊張はない。泣いても笑っても私たちの青春は時間にして4分半前後で終わる。ならば今までの思い出よりもこの時間の方が重かったと言えるように今までの全部を詰め込んでやる――。


作品名:メドレーガールズ 作家名:八馬八朔