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メドレーガールズ

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  決戦の日

 

 大会当日、八月の太陽は容赦なく照り付け、外にいる者の体力と気力を奪う。暑く、そして熱い一日が始まる。試合会場は屋根つきのプールなので陽射しの強さを心配することはないけれど、気温と湿度は十分に高く、気持ちを保つための体力が必要だ。試合本番だけでなく、待ち時間の過ごし方も計算に入れておかなければならない。
 小さな地区大会ながらレベルは県内でも随一で、大勢の観客が応援に来ている。来週にはタイに引っ越してしまうのんたんの家族、店を休みにして来たのだろうか真由の両親、そして私と律っちゃんの両親も後ろの観客席に座っている。さらにその奥、デートに来たのかお姉ちゃんと廉太郎君までいる。うちの家族はともかくとして、わざわざ時間を作ってまで見に来てくれたみんなの期待に応えたい、これまでは自信がなかったから誰かに見にこられると恥ずかしい気がしたけれど、今年は練習を重ねる内にそんな事も気にならなくなった。それだけでも自分の中で進歩しているのが実感できる――。

 大会が進行するとそれぞれが種目別のタイムテーブルに従って行動するので、団体戦であるリレー以外はみんなバラバラになる。先生も運営に当たっているため滅多に戻ってこない。さらに下級生は記録係の応援などもするので、会場には大勢の人がいるのに選手は案外孤独になる。しかし自分が競技する時以外は時間があるといえばそうでもなく、平泳ぎのパートリーダーである私は、後輩たちを率いて個人戦に臨む役割があるのでそれなりに重責があるのだ。
 個人戦は自由形(フリー)、個人メドレー、背泳ぎ(バック)、バタフライ、平泳ぎ(ブレスト)の順だ。従って私たちチーム・ブレストは最後になる。チームとしての目標は全員予選通過、個人的にはもちろん一着だ。目標だけは高く持ちたい。

 そんな中で我が浦風中学に快挙があった。100メートルの自由形で、律っちゃんが堂々の2位入賞、続いて個人メドレーの真美ちゃんも一年生ながら3位、背泳でのんたんも3位、そしてバタフライで真由が同じクラブチームの波多野さんを抑えて一足早く優勝の栄冠を手にした。  
 私はと言うと、自分でも信じられないが予選3位で決勝進出できた。チームの勢いは確かに感じられる。私は気持ちを落ち着かせて、控え室で自分の出番を待った――。
作品名:メドレーガールズ 作家名:八馬八朔