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メドレーガールズ

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 次はバタフライだ。あとの二種目は真由が出るか律っちゃんが出るかのどちらかだ。普段のパートで考えると律っちゃんが順当だろう、真由はフリーで去年の借りを返したいのもある。自分の役目が終わった事もあって二人には申し訳ないけど、どっちが勝っても二人で種目を分け合うと思っていた上に、今日の力を使い果たしてしまったので、気分はもう四人で大会の舞台に立っている姿を頭に浮かべていた。

 ビッ!

 二人とも同時にスタートした。律っちゃんは最初からトップスピード、一方の真由はスローペース。後半に力を使いきるのは真由の形だ。自己ベストでいくと真由の方が僅かに速い。
 後半になって律っちゃんはペースを落ちるどころか上がっている。真由も火がついたように猛追するが、結局律っちゃんが一着だった。真由は自由形があるので次に本気を出すのだろう、ここにいる誰もがそう思った。

 そして最後の種目、さっきとは逆で、予想通り伸び伸びと泳いだ真由が機先を制している。しかし、僅か後ろを追う律っちゃんの泳ぎを見て私は普段とは違う空気を感じた。
「帆那、今日の律っちゃんスゴいよ」
 横ののんたんも同じものを感じたようだった。よく見れば真由のペースもどこかしっくり来ていない。それは同じく観戦している真美ちゃんの言葉で気付いた。
 結局その違和感の正体がわからないまま、律っちゃんはバタフライで力を使いすぎたの僅かに遅れて二着。それでも最後の25メートル、律っちゃんのラップは真由を上回っていて、さすがはキャプテンの意地だ。先生含め、全ての部員から拍手が送られた。真由も勝つには勝ったが首を傾げていた。

   * * *
 
 トライアルが終わると普段ならこれから通常の練習に入るところだが、さっきまで我慢していた雲が耐えきれず、まるで空に穴が開いたような大雨が降りだして練習は中止になった。
「正式な発表は来週します。それまで浮かれないように、いい?」
 私は元気よく返事したけど、心の中では浮かれずにいられなかった――。


作品名:メドレーガールズ 作家名:八馬八朔