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短編集『ホッとする話』

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二六お姉ちゃんと私



 学校の部活を引退すると、周りは受験モードになり、目標に向かってすべの力をそこに集中させるようになる。もちろん私もその一人なのだが、目標とする高校があまりに高いところにあって、見えない戦いを強いられているようで手応えのない毎日にヤキモキしていることは否定しない。

 私立の剣道の強豪校から誘いはあったけど、今の倉泉家は余裕もないからそこは丁重にお断りするしかなかった。結局は姉も兄も同じ高校に進学したから、その流れで私もということになったのだけど、きょうだいたちが乗り越えたハードルの高さをまざまざと知らされたのは三年になってからだった。
 私にとってそれはハードルなんかじゃなく、棒高跳びのような勢いだ。そこをパスするにはすべてのものを味方につけても今の私には難しい。

 そして、自分を取り巻く環境も有利ではない。普段から誰の助けも求めない兄は良いとして、姉が受験をした10年前は家庭が上手く回っていて、今思えばあの時は日系二世の父や近所に勉強を教えてくれる、とんでもなく賢い幼なじみがいて、持っている以上の力が出せたような気がしてならない。
 私が初めて体験する受験というものは己の力だけでなく、いろんな支えがあるということは、直接聞いていないけど上のきょうだいたちを見てなんとなく感じていた。

 それも昔の話。今の私にはそんな味方もなく、姉は嫁いで家を離れ、兄も高校卒業後実家を離れた。そして、父も離婚してアメリカに帰ってしまった――。今ある中で最大限の知恵を絞って挑むのは自分のルールだから、そこを求めたところで与えられるわけではないのはよく分かっているんだけど――

  私は姉に嫉妬していた。

 そう思う自分が未熟と思えて情けない。