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短編集『ホッとする話』

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七 西方の満月 26.10.26



 劉尭は家の窓から見える池を眺めた、静かな水面に見事な満月が映っている、雲ひとつない満天の夜空だ。
「劉尭さま。今日は寒うございます、窓をお閉めになったほうがよろしいですよ」
「おお、麗麗。すまなかった」尭は窓を閉めて妻の麗麗に抱擁をしたあと手を彼女の張ち切れんばかりに大きくなった腹に当てた。
「今日は月がきれいで見とれていたのだよ」尭がそういうと麗麗は袖を口に当ててクスクスと笑い出した。
「そうですね。月が私たちをめぐり逢わせたのですから」
「うむ。月には感謝せねば」
 そういって尭は自分の上着を妻の肩に掛けて部屋の灯りを消した――。