小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

逢魔ヶ刻の少女

INDEX|9ページ/15ページ|

次のページ前のページ
 


 塩コーヒーに戦慄すること十分。カンテラは漸くここに来た理由を思い出した。
「そうだ、マスター。この町の、特に九十年代に付いて詳しく知りたいんだけど、なんか知らないかな?」
 そう言って、カンテラはバックパックからプリント用紙を一部取り出した。その用紙には、彩花市の年表がプリントされていた。
「この九十年代の記述がぽっかり抜けててさ」
 他の年代も同じことであるが、カンテラにとってこの九十年代の記述が大切なのであった。
「バブルがはじけた頃ですか。そうですねぇ……まあ、大きな事件もありませんでしたしねぇ。というより、色々あり過ぎて郷土史にはまとめきれなくなった、が正しいのかもしれません」
 なるほど。尺の問題だったか。カンテラは納得し、用紙をポケットに仕舞う。
「町の図書館なら当時の新聞もありますし、近年史をまとめた冊子があったと思いますので、尋ねてみては?」
「そりゃありがたい」
 更にそれから十分ほどコーヒーを楽しみ、店を出る。
 ちらちらと雪が降り始めていた。その雪をぼぅっと眺めつつ、カンテラは歩き始める。バックパックに吊るしたカンテラがかちゃんと音を立てる。
 まだ日が落ちるには早い時間だ。しかし、この町の夜は早く長い。気を抜いているとすぐに暗くなってしまう。山に太陽光が阻まれる為に日照時間が短くなるのだ。
 図書館に行くのは良いとして、今から行っても閉館時間に間に合わないだろう。よしんば間に合ったとしても、資料を物色する時間がない。
 とりあえず、今日は廃レストランに戻ろう。憂鬱だが、まあ、今のところ実害があるわけではないのだから。

作品名:逢魔ヶ刻の少女 作家名:最中の中