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(略)探偵

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File4:瓶(略)鍵


「不思議だ……」
「実に不思議だ……」
「実に実に不思議だ……」
「あの、先生」
「実に実に実に」
「あのだから先生、人に強制的に聞かせるための独り言はやめてくれません?」
「おや、聞いていたのかい?」
「……」
「聞いていたなら丁度良い。見てくれ給え」
「そういえば不思議だ不思議だって言ってましたけど。何が不思議なんですか?」
「よく訊いてくれたね!君はさすが僕の助手だ」
「最前の流れでそれを察知できなければ人間失格だと思いますけどね」
「……いいから、見てくれるかい?これを」
「瓶、ですね。中に鍵が入っている」
「そう!中に鍵が入っている!それがどういうことか解かるかい?」
「誰かが中に鍵を入れたということですね」
「まあ、その通り。だが真実はもう少し、深い。よーくこの瓶と鍵の関係を観察してみたまえ」
「瓶の口よりも、鍵の方が大きいですね」
「そうだ!よく陳腐なドラマやマジックなんかに出てくる代物さ」
「で?」
「で?って」
「何が不思議なんですか?これの」
「だって、君」
「先生、この瓶よく観察して下さい。底の方に切れ目と溶接の跡があります」
「……」
「切れ目と溶接の跡があります」
「わざわざ繰り返さなくて良いよ」
「先生のお返事がなかったものですから。耳が遠くなったのかと」
「失礼だね。僕はそんな歳じゃないよ」
「意外です」
「君は、なんて言うか、本当に……もとい。君にはちょっとガッカリしたよ」
「悔し紛れですか?」
「そうじゃなくてね。僕だってそれくらいちゃんと解かっていたさ」
「……」
「その冷たい目はちょっと泣きそうになるよ。この瓶は、今回の依頼人が持ってきた物さ」
「はあ」
「密室殺人が起きた現場に置いてあった、その部屋の鍵らしいんだけどね。この鍵が、それこそ事件の鍵だったんだ」
「寒い」
「……でね。不思議だ不思議だということで、僕の所に持ち込まれた訳なんだ」
「すぐ謎が解けたなら、さっさと依頼主に伝えて差し上げれば宜しいのでは?」
「いやあ、すぐ返すには、ちょっと考えたい点が残ってね」
「何ですか?それは」
「何故、依頼主はこれを見て不思議だと思ったのか、それが気になって仕方なくてね。さっきから考えていたのさ。
どうやったらこれが不思議なものに見えるのか、ね」
「先生の考える所には、到底僕は到達できません……」

「羨ましいかい?」
「いえ全く」
「……君が何故僕の助手なのか、時折疑問に思うよ……」
「僕もです」
「!!」
作品名:(略)探偵 作家名:雪崩