（略）探偵
「何事も、シンプルこそが美しい。巷に溢れるミステリだってあんなに分厚いけれど、余計なものを篩い落とせば残るのは謎とその答えだけ。つまりは謎と謎解きさえあれば、ミステリなんて十分なのさ。」
「はあ、そんなもんですか。」
「そうさ。ただし、僕は読むなら薄っぺらいミステリよりは断然分厚い方が好きだがね。何を言いたいのかというと、現実の名探偵である僕の前には余計なものなんて余計なだけ。謎があれば、僕はその謎を解くだけだ。人間関係やアリバイや、奇妙奇天烈なトリックなんて、僕には必要ないのだよ！」
「はあ。」
「まあ実の所は作者がちゃんとしたミステリを考える頭がなくて、チャチな謎とその答えを用意するのがやっと、ということだがね。全く困った人間だよ。」
「そういう所まで鋭い謎解きをする必要がどこにあるんですか？自慢ですか？宣伝行為ですか？」
「なかなか君はキツイ毒を吐くね。…というか、君は誰だい？作品の中に君のような人間が居たかい？僕には全く覚えがないんだが。」
「助手です。先生が警部に現場に呼び出されるたびに事務所の留守を預かっているのは僕なんですが。」
「おやそうなのかい。まあ、事務所の記述がないから、君が出てくる場所がない、という訳だね。」
「そうです。全く、作者死ね。」
「君は本当にキツイね……。まあ、これも作者に小学生並の発想が閃く度に増えていく予定らしいから、気を長く持ちたまえ。」
「……はあ。」