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夏目 愛子
夏目 愛子
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Modern Life Is Rubbish ギリシャ旅行記

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4.強烈大集合inミコノス


 
 
2013年8月31日 土曜日
 
  
●1. いかにもミコノスらしい景色たち
 ミコノス3日目。
 昼間はミコノス・タウンを再び散策して、島の北側にあるパノルモス・ビーチで遊んだ。
 
 ミコノス・タウンへの道中(とはいってもバギーでほんの10分ほどであるが)、丘の上からミコノス・タウン方面へ下っていく道がある。ここから見下ろす景色はきっと誰が見ても美しく、忘れられないものになると思う。そのくらい美しく開放的である。実際、何組かのカップル(これはゲイ・カップルも含まれる)たちは写真を撮っていた。私たちももれなく写真撮影した。
 
 ミコノス・タウンは白い建物をベースに店内はカラフルで素敵なセンスのショップが迷路のような道にこまごまと立ち並び、歩くだけで本当に美しく楽しい街だ。
 ショップ達の迷路を抜けてすぐの海沿いの白い教会のそばでは、青い空と碧い海をバックに、白い海鳥の群れがじゃれあうように空を舞っていた。
 なんと美しい光景!
 
 それにしても、海鳥たちは何をしているのだろう?
 
 教会の裏にまわると、海の岸にあたる岩場があった。
 そこでは2人の麦わら帽子をかぶったおじさん(これは遠かったのでゾルバかどうかは不明である)が釣りをしていた。
 彼らは小さな岩をいくつも並べてサークルを作り、その円の中の海水に、釣って死んだ魚を放りこんでいた。
 もちろん、ときどきは、釣れた魚を自分たちのバケツにも入れていた。
 それでも、釣った魚の大半は、その不思議なサークルの中に投げ込んでいた。
 海鳥が群がっていたのは、この魚にたいしてであった。
 なんともいえぬ素晴らしい景色の舞台裏は、こんな具合の食物連鎖の世界だった。
 
 それから、小腹のすいた私たちは、フローズン・ギリシャ・ヨーグルト専門店を見つけて入った。きちんとテーブル、椅子、ソファもあり、オープンテラスで食べられる。これが美味だった。フローズンなので、最初はさっぱりしている。けれど、食べても食べてもあっさりはしない。ギリシャ・ヨーグルトの濃厚さがこれでもかと最後まで残っている。
 
 そのお店では、おかしな体型の男を見かけた。彼は上半身裸で下は海パンで店内を誰かを探すようににこにこぷらぷらと歩いていた。これも毛深さについてはゾルバ風ではあった。背は高く、下半身はすらっと細く、顔も標準的な、どちらかといえばやせている方の顔だった。しかし、問題はその上半身だ。細い胴体の上で、胸とおなかが異様に垂れているのだ。
 
 私たちは彼をしばらく見守った後、互いに顔を見合わせて、
 「どこかが変じゃない?」
 と話し合った。
 結果、彼はダイエットに失敗したのだという結論に至った。ダイエットを急激に行った結果、おそらく皮膚がついていかなかったのだろう、と。
 

●2. 手遅れのゆでだこ
 島の北のパノルモス・ビーチへは再びバギーにのっかって向かった。おおよそ30分〜40分はかかっただろうか。北側へ向かう道中は、いわゆるミコノスらしい白壁と青というよりは、緑のない茶色の山肌が延々とつづき、ぽつぽつとだけ白壁の建物が点在する、壮大な、やや荒っぽい、道のりである。しかし、わたしはこれはこれですごく好きだった。
 
 パノルモス・ビーチは、南のパラダイス・ビーチやスーパー・パラダイスビーチよりもずいぶんと落ち着いた印象のビーチだった。海の美しさは変わらず、透明である。ゲイの人たちの数がおそらく少なかったかと思う。このビーチ・サイドで食べたフライド・ポテトがこれまた美味だった。これは個人的にはフローズン・ギリシャ・ヨーグルトに勝る美味しさだった。何が美味しいって、ソースが美味しいのだ。マスタードとマヨネーズをまぜたような味、でもそれだけではなく何らかの酸味やドレッシングのような味わいもある。もちろん、ジャンクでないとは言わない。しかし、家で再現してみたい味であった。
 
 このビーチでは、泳ぐというよりは、ビーチ・サイドでたらたらしていた。わたしは、ヘッセの「デミアン」を読んでいた。夫は春樹の「遠い太鼓」を読んでいたと思う。何ということもなく過ごしていたら、ふと目をあげたその先、私たちの目の前のパラソルの下には、ゆでだこがいた。正確には、ゆでだこのように頭を真っ赤っ赤に日焼けした、つるつる坊主の太った男性がいた。
 
 しばらく観察していると、隣の女性(おそらく恋人か奥さんだろう)が、ゆでだこの頭に日焼け止めをせかせかと塗り始めた。しかし、これは手遅れの処置であることは誰の目にも明らかだった。奥さんもゆでだこ本人も、その事実にすぐに気付いたのだろう。そのあと、奥さんはゆでだこの頭に白いタオルを巻き始めた。これも手遅れではあるが、見た目上ゆでだこであるということを隠すには有効な対策であった。
 
 気付いたら、夕陽の時刻になりそうだった。今日はミコノスの最後の晩だ。夕陽を逃すまいとやや急いでミコノス・タウンに戻った。例のリトル・ヴェニスの、ゾルバ三人グループが居座っていたほうのお店で、夕陽が落ちていくのを眺めながら夕飯をとった。夕飯は、サラダとエビのサガナキ、それからシーフード・リゾット。このサガナキというのはトマトソースとチーズをベースにした炒め煮込みのようなギリシャ料理だが、濃い味付けで、エビのエキスも存分に浸透していて、美味しかった。こう書いていると、この日は美味しいもの三昧だったんだなあ。
 
 スペインのパーティーアイランド、イビサ島とは異なり、ここミコノス島では夕陽を眺めながらのカフェやレストランで、素敵な音楽はかからない。
 それでも、これはこれで素朴な良さがある。海の音が聴こえる。さらに小さな防波堤まがいの海沿いの壁に強い風で打ちつけられる波の苛酷な音もよく聴こえる。しまいには、その波の苛酷さには笑いがこみあげてくる。そのくらい苛酷である。
 波が苛酷すぎて、小さな防波堤を飛び越え、カフェにも水が飛び散ってしまっている。この日は特に波が強かったようで、途中から、さすがのゆるゆるな空気をまとったギリシャのウェイターたちも、その約5メートルくらいの強波エリアは座ることを禁止した。
 
 最後の晩だし一遊びしよっか、と、クラブの情報を探した。ホテルでは、インターネットにアクセスできた。極力、インターネットは使わないように私は心がけていた。なんとなく、旅行ってそういう風にしたいのだ。しかし、クラブに行くならやっぱりいい音楽かかってるところに行きたい。そしてクラブの情報は、ガイドブックには載っていない。そういうわけで、インターネットをやむを得ず使う。