Modern Life Is Rubbish ギリシャ旅行記
後になってみると、この1シーンは、とても地味ではあったけれど、これぞ新婚旅行というようなゆったりとした幸せがあって、切り取って真空保存しておきたい、そんな1シーンだった。
夕食はペタニ・ベイ・ホテルのすぐそばのローカルな暖かい雰囲気のレストランでとった。
レストランの広いプール付きの庭のような部分では、豪華な衣装のセレブリティな雰囲気の人たちが30人〜40人ほど、わいわいと食事をしていた。これはセレブの貸切パーティーか何かかな?今日は入れないのかな?と思って、念のため、レストランで働く老女に訊いてみた。
「今日、私たちも入れます?」
老女は首を振って「ノー、イングリッシュ」と困った顔をする。そのほかの老女2名も同じように顔をしかめて首を振っている。
すると、セレブリティへの料理出しに忙しそうな30代か40代の背が低くまるっとした体型のチャキチャキとした女性が笑顔で戻ってきて、
「どうしたの?」
と話しかけてきた。彼女だけ英語が話せるようだった。
「今日、私たちも入れます?ここで食べてもいい?」
「オッケー」
チャキチャキは笑顔で返してくれた。
「あれって貸切パーティーか何かじゃないの?」
「あれは、ウェディングだよ」
他人様がウェディングをやっている中で他の客も食事ができるのだ。
なんとオープン!
もちろん、通常の客のエリアと、ウェディング客のエリアは異なっていた。ウェディング客はプール付きの庭部分で、私たち通常の客は、そのウェディングを上から眺められるような、少し段で上になった部分の席だった。私たち以外にも通常客は数組いた。
ウェディングは幸せな空気をこちらにも伝播してくれて、よく外国の映画でみかける、みんなで手をつないで輪になってダンスをするようなものもあって、楽しそうだった。
私たちはそんなウェディングを眺めながら、ケファロニアのきりっとした白ワインと、サラダとオムレツとミートパイ(ケファロニアはミートパイで有名とガイドブックにあった)、それから骨付きの豚肉のグリルを堪能した。ミートパイの中には、ミートと野菜だけでなく、炊いたお米も入っていた。だいたいの付け合わせにフライドポテトがあった点は謎だったが、どれもその土地の家庭料理的な味がして、暖かい感じがした。
それにしても、このレストランは、例のチャキチャキの彼女により切り盛りされていた。例のホテルの女将といい、このあたりは女性がチャキチャキ働くのが特徴なのだろうか?
作品名:Modern Life Is Rubbish ギリシャ旅行記 作家名:夏目 愛子