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霧雨堂の女中(ウェイトレス)

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――お知り合い?

見ると、マスターの目は笑っている。
でも何となく、口元が笑っていない気がしないでもない。
もしこれが作り笑いだとすれば、『普通は逆じゃないかな』と私は小首を傾げる。
ふとマスターが私の方を見た。
何となく、そんなつもりはないのだけれど二人の様子を盗み見ていたような気分になって、私は目をそらした。
するとマスターはつかつかと歩き出し、そのまま私の脇を抜けて入口のドアを開けたかと思うと。お店の前のプレートを【CLOSE】にくるりと切り替えた。
そしてまた男の方へと歩んで戻る。
「久しぶりですね」
マスターが呟いたその声は、何かに呆れているかのようにも、どこか懐かしげにも聞こえた。
「くわああっ!」
それに応じて男が奇声を上げる。
「『久しぶりですね』って、相っ変わらず気取り屋ぶるのう、主は!」
そしてバンバンとマスターの背中を叩いてみせた。
思わずそれにマスターが前へとつんのめる。
「貴方は相変わらずで何よりです」
「『貴方は相変わらず』と来たか!ははは!」
男はそう言いながら、本当に楽しそうにマスターの背中をさらに叩く。
マスターはそんな男に対して、手を差し出して店内のテーブルのひとつを示す。
男はうんと一度強く頷くと、さらにずかずかと歩いて椅子にどかっと腰を下ろした。