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霧雨堂の女中(ウェイトレス)

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酒と女中と霧雨堂



夕暮れと言える時間が迫ってきて、霧雨堂の窓の外にもぼんやりと車のテールランプが目立ち始めた。
今日の天気も雨。
だから窓についた雨粒は赤い光を滲ませて、それが夜の帳とともにささやかで、でもどことなく幻想的な景色をつかの間私の目に見せた。
ここの今日の営業時間もあと少し。

お客の切れた合間時間で、マスターはカウンターの内側に立ったままのんびりと文庫本をめくっている。
私はといえば、窓の外を眺めながら、壁のスピーカーから流れる音楽にそっと耳を傾けている。
お店の中には僅かなコーヒーの残り香。
そういえば今のところ最後のお客さんはチーズケーキを召し上がったっけ。
ほんのり酸味の残る甘い匂いもどこかしら残っている気がする。

こんな時間は嫌いじゃない。

――いや、それは正しい表現じゃないなと思い直す。

こういう時間はほんとうに贅沢で、

きっと、

私は――大好きだ。