小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

霧雨堂の女中(ウェイトレス)

INDEX|38ページ/117ページ|

次のページ前のページ
 

「何もかも、結局自分の思い通りになることなんて無いんです。
 私にはヒトの心が分かると思っていた。
 だからこそ私は仕事で成功し続けてきたのだと。
 でも実際は違った。
 いや、ある意味それは正しかったのかも知れません。
 しかし、私に『ヒトの気持ちが分かる』と言うことと、その結果ヒトに何かを伝えたり、そうやって『相手の心を思い通りに動かすことが出来るかどうか』と言うのは、当たり前ですが全くの別問題なのですよ。
 
 私は自分のその才能故に業績をのばて来たと感じていた。
 だけど、人の気持ちなんて言うのはおよそ煙のようなモノです。
 いつだって『観測した瞬間の形』は、次の一瞬には完全に変化を果たしている。

 私はそうして、かつてあるヒトの背中を押した。
 無責任に押した。
 その結果は、彼にある場所を飛び立たせる決心をさせるはずだった。
 私はそのことに疑いを持たなかった。

 だけど、実際にはそうならなかった。
 彼は飛び立った。
 飛び立ったのですが、飛んだ場所は彼がそれまであった社会や立場からではなく、実にとあるビルの屋上からだった。

 彼は身を投げたのです。
 それが全てではないにしても、私の言葉をはじめのきっかけにして」